ブラックメタルと言えばノルウェー。ここ日本では信じられないかもしれませんが、本当にこの厄介な音楽は、この国でとてつもなく大きな支持を得ております。実際ノルウェーのグラミー賞にあたる「Spellemanprisen」では、その手のバンドがバンバン受賞しちゃってるんですからねぇ。ひゃあ~怖い怖い~。そんなノルウェー・ブラックメタル・シーンにおいて欠かせない存在だったのがIMMORTAL。90年代初頭に出現し、その幅広い音楽性から、従来のブラックメタルという枠組みを越えちゃったスーパーバンド。ほんのり愛嬌のあるところも人気の所以でしたね。残念ながら解散してしまいましたが、フロントマンのOlve Eikemo aka Abbath Doom Occultaは、新バンドを結成。その名もズバリABBATH!!早速「LOUD PARK 2015」で来日を果たしたので、インタビューを敢行しました。がっちりコープス・ペイントをキメたAbbath&Kingがタクシーに乗って登場。運転手さんの顔が頭から離れません。
Abbath:ビールは無いのか?
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ああ、すいません。すぐにお出しします!
Abbath:オマエも飲め。飲みたいんだろ。
はい。では、乾杯!
Abbath:ノルウェーでは「スコール!」って言うんだ。…おいおい待て。インタビュー中の撮影は止めてくれ。ずっと撮り続けられると気が散る。これも経験から学んだことだ。悪いな。
ハイ、心得ました。
Abbath:「ハイ」ってノルウェー語で、なんて意味か知っているか?鮫のことだ。
勉強になりました。さて、今回が初めての日本ですか?
King:そうだ。初めてだ。(唸り声で)気ーにー入ーっーたー、ウウウー。
どんなところが気に入りましたか?
King:東、西、南、北。食い物、人、礼儀正しさ。全部だ。リタイアしたら日本に住みたい。
Abbath:それはオレが言ったんだろ。
King:いや、オレが言ったんだ。
Abbath:いや、オレだろ。
King:(唸り声で)オーレーだー、ウウウー。
LOUD PARKでのライヴはいかがでしたか?日本のオーディエンスとか。
Abbath:物凄く良かった。だけど、イベントは10時からで、12時に会場入りすればいいと聞いてたんだが、まさか真っ昼間の方だったとはな。日曜の朝なんか誰もいねえだろ。客のいない会場に音だけが響き渡ると心配していたんだが、会場に着いたらマネージャーが「ステージを見ろ」ってな。とんでもない人の数だった。パンパンだぜ。まぁ、音響トラブルもあったが……、オマエ、何してんだよ。
King:(箸で机を叩いている)ドラムだよ。
Abbath:そうか。とにかく、いいスタッフと仕事できて良かったな。
お二人は、どんな音楽を聴いて育ちましたか?
Abbath:キッズの頃にKISSに夢中になった。
Kingさんは?
King:俺は…なんだろうな。ネコ好きの変な町に住んでいたから思い出せない。
Abbath:Kingは、俺が知る限り最高のベーシストだ。
King:この部屋の中ではそうだな。
Abbath:メタル界のジョン・ポール・ジョーンズだからな。
KISSのどんなところが魅力でした?
Abbath:俺にとってのビートルズだ。最初の出会いは6~7歳のときだったな。当時ノルウェーには一つしかチャンネルが無くてな。夜中だったんだけど、プレスリーのショーがあるからって、親が起きていていいってな。キャンディーバッグを抱えて観ていたんだ。よくあんだろ、カードが入ってるヤツだ。サッカーのカードとかな。で、その袋を開けたら何が出てきたと思う?KISSさ。KISSキャンディーだよ。「コイツら何者だ?スーパーヒーローか?ギターの神か?」ってな。それからしばらくして、友達が『地獄の軍団』のカセットを貸してくれた。イントロが流れるたびに衝撃を受けた。「エウレカ!(これだ!)」ってな。これが俺のKISS物語だ。
King:俺もKISSを聴いて、それからLED ZEPPELINだ。
Abbath:ポール・スタンレーの話がしたい。
King:KISSのな。
Abbath:ポール・スタンレーがいなきゃ、KISSは無かった。俺に言わせれば、KISSがいなければLED ZEPPELINも無かった。ABBATHも無かった。だからKingも無かったことになる。Kingの次はなんだ?
King:俺のあとか?俺がいなくなればKingも終わりだ。
Abbath:いいことを教えてやる。Kingは知っている。「成功の秘訣」をな。
どうしたら成功するんですか?
Abbath:多くの人を怒らせることだ。
King:その通り。みんなを怒らせるんだ。俺はなんでも持っている。ルックスもいい。だから人は俺を羨む。羨ましすぎて怒るのも無理ない。人生はそういうもんだ。
ブラックメタルを始めたきっかけを教えてください。
King:ブラックメタルをやっているつもりはない。
Abbath:俺に任せろ。まずオマエに聞きたい。ブラックメタルが何か分かっているのか?
VENOMです。
Abbath:正解だ。そういうことだ。ブラックメタルはVENOMなんだ。ブラックメタルというものは、カテゴライズされたくないヤツの音楽のことだ。流れに逆らうヤツのことだ。後ろ指差すようなヤツに「ファックオフ」を突きつける。宗教にも政治にも「ファック」を突きつける。それこそロックンロールであり、ブラックメタルだ。つまり自由ってことだ。それが分かれば自由になれる。分からなければ時間をかけろ。ブラックメタルのアティチュードなんてものは、元から存在していたわけじゃない。VENOMだって、いろんなものが重なって生まれた。MOTÖRHEAD、SEX PISTOLS、アリス・クーパー、デヴィッド・ボウイもな。地獄から生えた木なんだ。
King:北欧神話には、木の話があるもんな。
Abbath:おい、King、オマエ今黒い涙が出てるぞ。
King:そうか。泣いてるんだ。(*メイクが汗で崩れていました)
ノルウェーでは、本当にブラックメタル・シーンが盛んで、政府が外交官向けにブラックメタル研修を始めたというニュースが、日本にも届きました。このような状況をどう思いますか?
King:前の市長はいいヤツだった。国営のテレビにも出て、「ブラックメタルを推奨したい」ってな。次の日の新聞で「こいつらを支持するか?」って、俺たちの写真も出てたんだぜ。
Abbath:それが今は女の市長になって最悪だ。あの女は汚職にまみれた政府側の人間だ。前の市長は良かった。
King:コーヒーキングだった。
Abbath:ブラジルに農園を持ってるんだぜ。好きな政治家も何人かはいるが、ヤツはその一人だった。ヤツに続けて欲しかった。
そんな状況について…
Abbath:待て。政治の話をしたいのか?それなら時間が足りない。
いえ、そんな状況をどうお考えなのかと。
King:政治家と争う気はない。ノルウェーは世界で一番いい国だと俺は思っている。大多数の意見も反映されるし、自由だし、したいことは何でもできるからな。
Abbath:首相がボスだ。
King:ゲイかもしれないが。違うか。
Abbath:ノルウェー人は真面目だ。
King:日本と似ているかもしれない。日本人は敬意を持って接するだろ。
Abbath:待て。政治の話はもう止めだ。一晩かかる。戦争についても聞くな。永遠に話し続ける。
では最後の質問です。みなさんの映像を観ていたら、うちの子供が「この人たちはなに!?」って大騒ぎしたんです。さっきのKISSのお話みたいに。「怪物なの?オバケなの?悪魔なの?宇宙人なの?」って。なんて答えたらいいですか?
Abbath:息子か。何歳だ?
4歳です。
Abbath:俺の息子は21歳だ。この間兵役を終えたぞ。Kingんところは何歳だっけ?12か?
King:正解。
Abbath:じゃ、その4歳の息子に言ってくれ。「好きなように思ってくれ」とな。真実はひとつ。オレたちはここにいて、するべきことをやっている。音楽も言葉も自由にやっている。あとはみんなが好きなように解釈してくれればいいんだ。もちろんオーディエンスから怒りを買うこともある。だがそれも自由なんだ。ロックンロール、オレが極めたいのはそれだけだ。俺が信じている宗教があるとすれば、それはロックンロールだ。すべて自分で決めろ。自由だ。