イラク戦争後、アメリカは、イラクのライフラインの復旧と拡大を約束していたが、未だそれは十分に成されていない。特に病院、医師の不足は、早急に解決しなければならない問題であり、バグダッドは大変な窮地に立たされている。30年続いた戦争により精神的に病む人や、環境汚染の悪化から感染症を抱える人、そしてテロ犠牲者など、患者は増え続ける一方、イラク政府はISとの戦闘資金に財源を確保するため、保健省の予算を削減。さらに医療関係者の徴兵、医師への不当な扱いなどから、イラクを離れる医師も増え続けている。フセイン前大統領は、自ら築いた医療制度を湾岸戦争で無駄にしたが、現政権も国民の健康を犠牲にしてISとの戦いを続けている。バグダッドの医師を訪ね、混迷を極める現在のイラク医療事情をレポート。原題:DOCTORS IN BAGHDAD(2015)