フェス初心者に贈る、生き残るためのアドバイス

今年初めてフェスに参加する人たちへ:メルカリで買ったセットアップ数着に500円玉だけを持っていくなんてことはしないように。
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translated by Ai Nakayama
Tokyo, JP
First Time Music Festival Guide How-To UK
All photos: Chris Bethell

夏が始まる! みんな、大いに喜ぼう! 太陽の光が降り注いで(実際イギリスは曇りがちで陰鬱で悲しい感じだけどそれでも)、2019年以来初めてとなる無規制のフェスシーズンがやってくる。すばらしい。まあ、すばらしいとは言わないまでも、少なくとも悪くはない。

新型コロナウイルス感染症の規制が2年続いたことで、おそらくこれまで一度もフェスに参加したことがないという若者も多いはず。そんな若者たちに私が伝えたいのは、「とにかく楽しんで」に尽きる。すべての瞬間を楽しみ、味わい尽くしてほしい。なぜなら年齢を重ねたとき高確率でこの夏を思い出し、人間としての幸福の頂点にいた、人生唯一の瞬間だったと思うだろうから(プレッシャーじゃないよ)。

あなたたちは今、若く、屈託もなく、そして美しい。その力を賢く使わなくちゃいけない。年をとったら骨は痛むし、サイダーを飲む前には1缶にどれくらい砂糖が入ってるか確認せずにはいられなくなるし、「この茶色のローファーめちゃ丈夫そうだな」とABCマートの店舗の前で立ち止まることになる。

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ただ、そうなる前でも、初めてのキャンプインフェスの前に備えておくことがある。空腹で気絶したり、トイレにバックを落として腕が抜けなくなった「ウンコガール」として人々の記憶に残る最悪の状態を避けたいなら、ぜひ目を通してほしい。

赤ちゃん用おしりふき(ウェットティッシュ)を持参すること

最高の音楽フェスは確かに美しいが、同時に不潔だ。くさいし、汚いし、少なくとも1回は誰かのゲロおよび/またはウンコを浴びる羽目になる。そんな状況でも赤ちゃんのおしりふき1パックを持っていれば、クリーンなシールドに守られた気分で週末を過ごせる(おそらく年金受給者も似たような気持ちなんじゃないかと思う)。

おしりふきを買うための2.5ポンド(約400円)は、フェスの準備で使うお金でもっとも価値のある2.5ポンドだ。あと殺菌ジェルも。あと常に身につけておける小さめのウエストバッグも。そうすればオリヴィア・ロドリゴを観ていて大観衆の中にスマホを落とし、何千人もの怒れるティーンエイジャーに踏み潰されて粉々になるスクリーンを見ずに済む。

ドラッグをやるなら正しく使用すること

フェス初参加者のなかには、まだドラッグがもたらすハイとローについて完全には知らないひともいるかもしれない。どこまでも高く上がっていく身体と意識。そして(当然ながら)再びまっすぐ下に落ちていくのを見つめる恐怖。きっとあなたは思うだろう。フェスって初めてのドラッグ体験にはうってつけの場所なのでは、と。

それは半分正しく半分間違っている。確かに動物園や駅と比べれば、フェスはドラッグをやるには楽しく安全な場所だけど、注意しておいてほしい。たとえば仮設トイレの前で「スピードと2C-Bを混ぜたような感じだよ」などと説明する適当なひとから適当なドラッグを買っちゃダメ。フェスの前に信頼できる相手から買っておこう。NPO団体のThe Loopによるドラッグの安全確認テストが会場で実施されている場合は、自分が摂取しようとしているドラッグの成分を確認しよう。

注意:安全じゃなければ楽しいドラッグ体験にはならない。ケタミンを摂取しすぎた結果、「脚がない! 腕がない!」と騒ぐ泥まみれのあなたの姿なんて誰も見たくない。もし大変なことになったら救護テントに助けを求めよう。

メインステージの近くで仲間とはぐれたときの集合場所を決めておくこと

今回のアドバイスのなかでもいちばん味気ないのは承知だけど、「ここのバーガー屋台の前」など具体的に集合場所を決めておくのがおすすめ。トイレを探したり、「新しい親友」との「探索」に出かけてはぐれたときには、スーパーで迷子になった子供さながらそこでじっと待っていればいい。

これはガチだけど、夜の10時、FOO FIGHTERSの演奏中に電話の向こうに「左の赤い旗みたいなとこで落ち合おう」なんて叫んでも全く無駄。愚かな試みで4時間も無為に過ごすことのないように、集合場所は決めておこう。

テントを組み立てられる、気の利くひとを連れていくこと

「説明書を読む」とか「テント用のペグを余分に持っていく」みたいな退屈で実務的な作業を好むひとはあまりいないけど、もしあなたもそうじゃないなら、率先して取り組んでくれるような気の利いた友達を連れていくことをおすすめする。もしあなたが気が利く側なら、おめでとう!

過去のフェスで実際に私のテントに起きたことを紹介する。①屋根が反転して、雨水が25センチほど溜まった。②私が組み立てたテントの入口が誤って知らない男性のテントの入口と隣接してしまい、お互いにファスナーを開けたら隣のテントにつながる状態になった。③フェス2日目、ちゃんと固定していなかったためにテントが丸ごと吹き飛ばされた。今振り返ってみればどれも笑い話だけど、実際に自分の身に起きたら笑ってはいられないはず。

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Someone's pitched tent at a music festival at night

知らない誰かと本当にセックスしたいかよく考えること

ハイになっているときは誰もがセクシーに見えるもの。ムラムラするのもわかる。でも実際、知らないひととのセックスなら365日いつだってできる。だけど、HOUSE OF PAINを聴きながら、9.5ポンド(約1500円)のビール片手にでんぐり返しで丘を下ることのできる木曜の午後は他にない。バケハをかぶった知らない誰かと洗ってない性器をこすり合い、即尿路結石になってすべてを台無しにしてしまってはもったいなさすぎる。

とはいえ、もし絶対に誰かとヤらないといけないのであればこちらの記事(how to have sex at a music festival)を参考にして。

フェス飯用に最低20ポンド(約3000円)は持っていくこと

これが最低金額だ。若くてセクシーなあなたはシリアルバーや個包装されたチョコクレープのお菓子みたいなものだけで週末を過ごせるかもしれない。ただ、だからといってフェス当日までに予算をDepoで買うセットアップと接着剤付きラインストーンに全振りしてしまうと絶対に後悔する。

二日酔いの友達がみんな8ポンド(約1300円)のピザを食べて「このチーズマジで神」などと話しているあいだ、あなたは悲しみと蚊帳の外感でいっぱいになる。そんな感情はフェスではふさわしくない。今から貯金をはじめよう。フェス飯資金を貯める価値はある。

A pile of food that you might feasibly take to a music festival

フェスには丈夫な靴ときれいな靴下(たくさん)を持参すること

これはフェスの心得の基礎の基礎なので詳細は省くけど、フェスではとにかくめちゃ歩く。ドクターマーチンかドクターマーチン風の靴、あるいは長靴(できれば持っていきたくないが雨が降るかもしれない)を選ぼう。きれいな靴下もたくさん要る。あと1000歩歩いたらよくわからない古風な名前の病気(例:塹壕足)にかかる予感しかしない足の状態ではフェスを楽しめない。

あなたが私のような人間なら、フェスのあいだはずっと同じような格好をすることになるだろう。だからこそ必需品は絶対に忘れちゃいけない。キラキラのチューブトップのことばかり考えてパンツやフーディーを失念しないように。夜9時を過ぎたら凍えることになる。

スケジュールをガチガチに詰めて全アーティストを見ようとしないこと

見逃したら「ガチで死ぬ」アーティストのリストがそれぞれあるだろう。しかし考えてみてほしい。フェス会場は広大で、山の上だったりする。ステージからステージへ移動するのに数時間かかることもある。一方、ずっと座って人生を送ってきたあなたは、18分歩くより地下鉄に乗るタイプの人間だ。申し訳ないけど、仲間の観たいセトリを全部観るのに必要な身体的・精神的エネルギーはあなたには備わっていない。

苦労して手にした貴重な休日を、『ロード・オブ・ザ・リング』の登場人物のように小さな地図を見ながら牧草地をトレッキングして終わらせたくないなら、〈バイブス〉に身を委ねよう。観たいと思うものがあればそこで足を止めればいい。バイブスは最強なので、めったに間違うことはない。まあ、結局お祭りなんだから、何をしたって楽しめるんだけど。

by @ionaeee