イラストで見るオーストラリアの森林火災

イラストで見るオーストラリアの森林火災

数ヶ月に及ぶ深刻な干ばつと記録的な猛暑のあと、オーストラリア南東部で発生した未曾有の火災。炎は今もこの国で猛威を振るい続けている。

本記事執筆時点で、今回の火災によって20人以上の命が奪われ、家屋が倒壊し、オーストラリア固有の野生動物の生息地が焼失し、その多くが危機に瀕している。専門家は、火はすぐには消し止められそうにないと予測している。

Videos by VICE

ニュースでは恐ろしい数字が報道されているが、現状の悲惨さを数字だけで思い描くのは難しい。〈百聞は一見に如かず〉ということで、これらの数字をイラストで説明したい。

australia bushfire
●:森林火災の影響を受けている地域 (北から時計回りに)ダーウィン、ブリスベン、シドニー、キャンベラ、メルボルン、パース

素早い火の手

australia bushfire
低木林火災が広まる速度:時速22.53キロメートル 人間が走る速度:時速9.81キロメートル

低木林火災が広まる平均速度は、時速22.53キロメートル。これは普通の森林火災が広まる平均速度(時速10.78キロメートル)の約2倍だ。人間が走る平均速度(時速9.81キロメートル)よりもずっと速いため、非常に危険だ。低木林火災が広まる速度は、湿度、地形、風速、気温によってはさらに速くなることもある。

気温の上昇

2019年12月、オーストラリアの気温は2度、観測史上最高記録を更新した。12月17日には全国平均気温40.9°Cを記録したが、翌日にはそれを上回る41.9°Cを記録。両者とも2013年の40.3°Cという記録を上回る数字だ。例年では1〜2月にもっとも暑い時期を迎えるため、気温はさらに上昇する見込みだ。

40°Cとはどれくらいの暑さなのか。世界保健機関(WHO)によると、人間の身体にとっての最適温度は18〜24°C。研究からもわかるように、気温が40°Cに達すると、身体が熱を逃がそうと必死になり、最悪死に至る場合もある。死者7万人を出した2003年のヨーロッパの熱波では、最高気温が何度も40°Cを超えた地域もあった。

日々拡大する被害

最近の報告によれば、2019年9月に火災が発生して以来、国内の焼失面積は1030万ヘクタールを超えた。これは韓国の国土面積に相当し、FIFA公認サッカー場の約1000万倍に匹敵する。

australia bushfire damage
(左から順に)2018年 カリフォルニア州の山火事:80万ヘクタール 2019年 アマゾン熱帯雨林火災:90万ヘクタール 2019-2020年 オーストラリア低木林火災:1030万ヘクタール

今回の被害は、約80万ヘクタールが焼失した2018年のカリフォルニア州の山火事、約90万ヘクタールが焼失した2019年のアマゾン熱帯雨林火災を大きく上回る。

炎の犠牲になったひとびとや動物

2020年1月10日時点で、火災によって少なくとも25名が亡くなり、2000軒以上の家屋が倒壊した。

koalas died bushfire
ニューサウスウェールズ州に生息するコアラの3分の1が死亡

さらに、コアラ、カンガルー、カモノハシ、コカトゥーなど、オーストラリアの野生生物およそ10億匹が火災の被害を受けた。なかでもニューサウスウェールズ州では、同州に生息するコアラの約3分の1が死亡した。

有害な煙

森林火災の煙には、一酸化炭素などの有毒ガスや、PM2.5として知られる微小粒子状物質が含まれる。これを吸い込むと、体内のほぼすべての内臓に悪影響が及ぶ。

一酸化炭素を大量に吸うと、血液中の酸素や、心臓、脳などの内臓から酸素が奪われる。大量に吸い込めば、わずか数分で全身に回り、何の前触れもなく意識を失ったり、窒息状態に陥る可能性もある。

WHOは、室内での一酸化炭素の濃度を毎時25ppm(※1ppm:空気1㎥中に一酸化炭素が1㎤含まれること)以下にするよう推奨している。屋内の火災の一酸化炭素濃度は、通常3000ppm程度だが、森林火災の場合は計り知れない。

数千人が消火活動に

ボランティアを含め、約2700人の消防士が消火活動にあたっている。これはニューサウスウェールズ州の消防士の4割に相当する(同州の消防隊は、都市部の消防隊としては世界第4位の規模を誇り、約6800人の消防士が在籍する)。

1月10日時点で、3名が消火活動中に亡くなっている。オーストラリア国防軍は1月5日、消火活動のために陸軍をはじめとする予備役部隊約3000人を招集したと発表した。米国の消防士もオーストラリアに向かい、消火活動にあたっている。

Find Lia on Twitter and Instagram.

This article originally appeared on VICE AU.