ジェシカ(Jessica)は、今晩もいつものようにコカインを楽しもうとしていた。しかし、その体験が恐ろしいものになるとは想像もしていなかった。
トロントを拠点とするジャーナリストである彼女は、3月のある日の夜11時頃、友人たちとコカイン1グラムをシェアしていた。しかし、1時間も経たないうちに、心臓がバクバクするのを感じた。少し落ち着こうと、彼女は数回深呼吸したが、まったく効果はなかった。確かにコカインを吸うと心拍数が上がるが、これほど激しい感覚は初めてだった。午前4時になっても、ジェシカの心拍数は下がらなかった。
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「だんだん幻覚のようなものも始まりました」と仮名で取材に応じたジェシカは語る。「上を見上げたらパニックになりました。天井が崩れ落ちてくるような気がして」
彼女はその後回復したが、この体験によって恐怖を植え付けられた。
「死ぬかと思いました。もうコカインを2度とやらないと誓いました」とジェシカはいう。しかし、しばらくは辞めていたものの、その後またコカインを再開したという。
「死ぬかと思いました。もう2度とやらないと誓いました」
今、ジェシカや他の北米のコカイン常用者が直面している問題は、コカインの質が予測不可能なほど危険になっているということだ。今回VICEは麻薬カルテルや販売業者、街なかの使用者、大卒者、麻薬と愛憎入り交じった関係にある専門職の富裕層を含め、北米に住む12名に話を聞いた(北米でコカインは違法薬物のため、匿名を条件に取材した)。コカインの体験は人それぞれだが、取材した使用者の大半が、ここ最近薬物の純度が急激に下がり、劣悪な添加物や〈カッティング物質(cutting agent:麻薬の使用量を抑えるために使われる化学物質)〉の使用が蔓延していると口を揃えて語った。
それと同時に、粉末コカインの人気が今まで以上に増している。特にパンデミック後には価格が高騰している場所もあり、信用できる売人は今まで以上に見つけるのが難しく、常連だけに販売する業者も増えている。さらに、上質なコカインを謳って明らかに高額な価格帯で提供している業者もある。
「『いやいや、そんなのただのうわさだよ』と一蹴していたのに、本当に質が変わったと言っている人が大勢います」とデンバーを拠点とする脚本家は語る。米国のコカインは非常に粗悪なため、彼は今、南米に旅行に行くときだけコカインを使うという。
コカインの使用には常にリスクがつきものだが、フェンタニルの普及をきっかけに、死を招く合成オピオイドがコカインに混入していることへの恐怖──そして恐怖の悪用──が広がっている。
しかし、事実を知るのは困難だ。現在米国とカナダで入手可能なコカインが、過ぎ去った時代の水準に近いことを示すデータはほとんど存在しない。とはいえ、たとえ使用者が意図的に両方の薬を同時に摂取する〈スピードボール〉でも、ずさんなディーラーによる偶然の交叉汚染が原因であっても、フェンタニルの危険性は決して看過できず、最悪の場合は死に至る可能性もある。
単純に最高品質のコカインを求める人びとにとっては、信頼できるコネクションを見つける難しさに加え、フェンタニルや他の物質が混入しているかもしれないという恐怖が、大きなストレス要因になっている。特に気にかけない使用者もいるが、二流のものにいら立ったり、恐ろしい体験に危機感を募らせたり、楽しいコカイン・パーティーはもう終わりかもしれない、とやるせない気持ちになっている人も少なくない。
パンデミックが始まる前、北カリフォルニアの小さな町で暮らす24歳の行動療法士のブリ(Bri)は週に2、3回コカインを使い、1グラムに60ドル(約8300円)支払っていた。しかし2020年3月以降、「どこも品薄みたいだった」と彼女は語る。
パンデミックが始まって2ヶ月、彼女はようやくコカインを入手することができたが、値段は1グラム80〜100ドル(約1万1100〜1万3900円)に跳ね上がっており、質は明らかに落ちていた。
「翌朝はほんとに最悪の気分だった。吸った瞬間に鼻に詰まってしまって」と彼女はいう。「ただのプラセボ効果のために、パーティーの時に吸うようなものに、大金を払ったなんて」
ブリによると、サプライヤーのひとりは100ドルでもっと良い商品を売ると提案したというが、より高価なものが高品質なのか、もしくは安価なものが意図的に質を落とされているのか、使用者が知る手立てはほとんどない。「粗悪なコカインならいらない。私には売らないで」とブリは売人に告げたという。
今でも業界に多くのコネクションがあるというとある元販売業者は、パンデミック初期に1キロあたりの価格が高騰し、末端の売人たちは製品により多くのカッティング物質を入れざるを得なくなった、とVICE Newsに語った。複数の使用者が質が突然落ちたと感じたのも無理はない。
「誰の手も触れていない良質なコカインはキラキラと輝いていて、魚のウロコのように見える」と彼は説明し、混ぜ物が多いほど固くなると付け加えた。「もし手で砕かないといけないくらい固いなら、カッティング物質が混ざっているということだ」
コカイン使用者は長年にわたって、鼻から吸い込む粉を薄めるのに何が使われているのかを、あれこれ推測してきた。よく名前が挙がるのは、家畜の駆虫薬レバミゾール。その他の常連はリドカインや局部麻酔薬、さらに合成カチノン(通称バスソルト)や安価なアンフェタミンなど、覚醒作用に似た症状を起こしたり、それを強めたりするとされる物質だ。
2010年の研究で、英国のチームは世界で供給されているコカインの中に最低でも48種類の「不純物」を発見し、破砕ガラスや殺鼠剤、他の有毒物質が混入しているというのは根も葉もないうわさだと結論づけた。「俗説に反し、コカインには有毒の家庭用品の化学物質や他の違法薬物ではなく、カフェインや砂糖などの無害な物質が混ぜられている」とこの論文は述べている。
その理由は明らかだ。毒や他の薬物を入れたら客が命を落とす場合もあり、無害な物質のほうが安価で、ずっと儲かるからだ。さらに、2020年の世界薬物報告書(United Nations World Drug Report)によれば、懸念に反して北米は今も世界最大のコカイン市場であり、2020年の使用者は640万人と推定されている。一方、ヨーロッパでの需要は急増し、純度もこの10年で上昇傾向にある。
米国麻薬取締局(Drug Enforcement Administration:DEA)は米国のコカインの正確な含有物の詳細な情報が明らかになるという実験室内試験を実施したが、その情報の大半は公開されていない。DEAの広報担当者はVICEのインタビューの依頼を断り、メールで送信した質問リストにも回答しなかった。
公衆衛生サービスの一環として薬物検査を実施しているハームリダクション団体もあるが、その結果には必ずしも純度や他の物質の割合は記載されていない。
フェンタニル試験紙などの薬物試験キットを供給している非営利団体〈DanceSafe〉の創設者、エマニュエル・スフェリオス(Emanuel Sferios)は、大まかに推測して、米国のコカインの純度は40〜60%だとVICE Newsに語った。これは国連薬物犯罪事務所(UNODC)の最近の推測とも一致する(ちなみに2020年のヨーロッパでの小売りレベルのコカインの純度は31〜80%と大きなばらつきがあり、半分以上の国が平均的な純度は54〜68%と報告している)。
2022年、質の低下に関するうわさが広がった件について、スフェリオスは典型的なコカインの消費──粉末を山やラインにして目分量ではかる──によって、クラウドソーシングによる意見が不確かなものになっていると指摘した。「私は使用者の主観的な体験だけを参考にしないようにしています。そこにはさまざまな要因がありますから」と彼は語る。「セット(※個人の精神状態)とセッティング(※体が置かれた環境)、1回の分量によって大きな違いが生じます。ほとんどのひとはコカイン1回分をわざわざ量ったりしません。ですから少しは懐疑的にならないと」
しかし、2007年以前の純度は65〜70%だったとし、過去のコカインのほうがもう少し強かったことを示唆する学術文献もある。この研究によれば、コカインの純度はパブロ・エスコバルや『特捜刑事マイアミ・バイス』の最盛期だった1987〜1988年がもっとも高かった。まだコロンビアの麻薬カルテルがカリブ海のルートを掌握し、中間業者の数を減らしていた時代だ。
コロンビアは今も世界最大のコカイン輸出国だが、米国の消費者に届けられる途中で、コカインは主にメキシコを経由し、カルテルによって国境を密輸される過程で複数の所有者の手に渡る。1キロのコカインが小さな袋に分けられ、地元のディーラーが製品の量を増やし、利益を最大にするために、1袋あたりの量を減らしたり、化学物質を加えたりする。
米国とカナダのさまざまな都市で暮らした経験がある重役のジェイソンにとって、「上流階級の」クライアントに対応できる売人を探すことはストレスの多い「ダンス」だ。まるで高級クラブの会員申請のように、2、3名からの推薦が必要な場合もある。
「みんな質問もせずに質を確認したがる」とジェイソンは説明する。彼は乗っている車にちなんで自分の売人を〈テスラ〉と呼んだ。「十分に検査し、検証し、保証するためのバカ騒ぎを突破できるくらい質が良くないといけないから、本当に大変だ。それでやっと信頼を得られる」
「俺ならもっと金を出して最高級のものを買うね。問題はそんなものがあるのか、ってことだけど」と彼は付け加えた。
「俺ならもっと金を出して最高級のものを買うね。問題はそんなものがあるのか、ってことだけど」
シナロア・カルテルの司令官は、最高純度のコカインは不純物を「洗い流されて」いるため、「La Lavada(英語でthe washed)」と呼ばれるとVICE Newsに語った。最近の技術革新によってブドウやさくらんぼ、モモなどのフルーツの香りがする人工香料を加えたという。
香り付きのコカインはどうやら(まだ)米国に到着しておらず、使用者たちは質の不安定さを懸念しているが、VICE Newsの取材に応じた人びとはコカインの使用について、酒を飲み続けたい、夜が終わってほしくない、もっと社交的になりたいなど、さまざまな理由を挙げた。
「即効性があって、夜が一変する。活動的になれるんだ」とジェイソンはいう。「普段よりも大胆になって、スーパーヒーローみたいな気分になるひともいるらしい」
しかし、コカインは持続時間の短いドラッグでもある。ハイの状態はたいてい1時間で終わり、さらに耐性がつくられるため、初めて使ったときと同じ高揚感が得られなくなることもあり得る。
数人の使用者は、質の悪いコカインを使ったときの感覚を「神経過敏」や即時的と表現した。翌日には耐え難いほどの不安を感じたり、ひどい二日酔いになるという。ジェイソンが品質を確かめる手段のひとつは、盛大な夜を過ごした翌日の作業効率だ。
「コロンビア風邪(※コカインを鼻から吸った後の鼻づまりを意味するスラング)の程度はどれくらい?」と彼は笑う。「鼻が詰まる? 完全に詰まってる? そこまででもない? それほどひどくないなら、そのコカインは純度が高く、そんなに問題はないってことだ」と彼はいう。「大事なことだろ。だってみんな次の日は仕事の会議に出なきゃいけないから」
もちろん、他のアクティビティと同様、成長によって楽しみが減少することもある。
「もっと欲しい、何日も寝ずにパーティーしていたいと思っていたんですが、ある日を境にそうではなくなった」とブリはいう。「年をとったのかも」
米国で、コカインを含む薬物による死者数は2013年以降毎年増加しており、2021年には過去最多の2万5000人だった。しかし、過剰摂取の急増の原因はコカインだけではない。フェンタニルのような合成オピオイドは、昨年の過剰摂取による死亡要因の3分の2を占め、専門家はコカインが関わる死亡の原因は、過剰摂取の危険因子を大幅に増加させる、ドラッグの意図的な併用だとしている。
ウィスコンシン州の路上のコカインの売人で、自身も定期的に使用しているというレイ(Ray)は、主に友人相手に販売しているため、製品の質を確かめるために、ここ6ヶ月間ずっとサンプルを検査しているとVICE Newsに語った。
今のところ、レイのサンプルからフェンタニルが検出されたことはない。レイが最も信頼するサプライヤーから届く小包からケタミンやアンフェタミンの陽性反応が出たことはないが、そのサプライヤーの都合がつかなかったときに別の業者から仕入れた包みからは、それらの物質が検出されたという。
レイは、仕入れ元がわからない包みを持っている相手と一緒にコカインを使うときは、必ず検査をすることを強く勧めている。
「そこまでよく知らない相手なら、ちょっと気まずくなるかもしれない」とレイはVICE Newsに語った。「『なんなの? わたしが信じられないってこと?』って感じで。そしたら『違う、そうじゃなくてあんたの売人が信じられないの』と答えればいい」
麻薬検査キットを販売するDosetest社は、フェンタニル試験紙の最大の顧客層がコカイン使用者だと語り、試験紙を購入するコカイン使用者は2016年以降1500%増加したという。同社はそのきっかけが混入物入りのコカインに関する報道だと考えている。2021年、DEAは米国公共ラジオ放送(NPR)に、陽性反応が出たコカインサンプルのフェンタニル含有率が2016年の1%から2020年の3.3%に増加したことを示すデータを提供した。
警察、政治家、保健当局が、売人が意図的にフェンタニル入りのコカインを販売していると声高に警告する一方で、もっともな疑問が浮上している。果たして夜通しパーティーする客向けの商品に、フェンタニルのような不安定で強力な鎮静剤を入れるだろうか?
果たして夜通しパーティーする客向けの商品に、フェンタニルのような不安定で強力な鎮静剤を入れるだろうか?
フェンタニルがコカインに混入していたのは事実だが、サプライチェーンのどの段階でそれが起きているのか、いわゆる〈フェンタニル入りのコカイン〉がどの程度広まっているかはいまだに不明だ。コカインに少量のフェンタニルが含まれていても必ずしも死に至るわけではなく、特定の顧客には需要があるかもしれない。ただし、彼らがそれを希望していて、高い耐性がある場合のみだが。
カルテルや他の販売業者がコカインにフェンタニルを加えている証拠は存在しない。シナロア・カルテルの司令官は、コカインにフェンタニルを混ぜることは厳しく禁じられていると語った。「人体に害がある」ため、現地ではフェンタニルの販売も禁止されているという。
可能性として最も考えられるのは、複数のハードドラッグを売り歩く末端の売人が同じ場所で商品を開封して包装し直し、結果として交叉汚染やコカインへのフェンタニル混入が発生しているということだ。
中にはコカインに意図的にフェンタニルを加える使用者もいる。覚醒作用のあるアッパー系の薬物とダウナー系のオピオイド系鎮痛薬の定番の組み合わせは、スピードボールとして知られている。レッドブルウォッカと同等のハードドラッグは、クリス・ファーレイやフィリップ・シーモア・ホフマンなど、数多くの有名人の命を奪ってきた。
薬物検査サービスを実施し、その結果を公表しているウェブサイト〈DrugsData.org〉は、最近フェンタニルとコカインの両方の陽性反応(含有率は多岐にわたる)が出た数百ものサンプルを掲載している。しかし、これらの薬物すべてがコカインとして販売されているわけではない。なかにはコカインがわずかに含まれているだけのオピオイドや、〈詳細不明の白い粉末〉というような曖昧なものもある。
最も参考になるのはオハイオ州警察の鑑識のデータだ。コカインとフェンタニルの両方を含むドラッグサンプルの割合は、2014年には1%未満だったが、2021年には14%以上に上昇した。〈ハームリダクション・オハイオ〉の代表、デニス・コーション(Dennis Cauchon)は、原因をひと言で説明することはできないが、過剰摂取を単にオピオイド危機による問題と考えるのは時代遅れだ、とVICE Newsに語った。
「不慮の事故の場合もあります」とコーションは説明する。「意図的なスピードボールやグーフボール(※訳注:メタンフェタミンとフェンタニルやカルフェンタニルなどを混ぜたもの)の場合もあります。売人が(混入を)知らないこともあれば、知っていることもあります」
オハイオ州のデータからは、サンプルがフェンタニル入りのコカインだったのか、もしくはその逆だったのかはわからず、ひとつの州の統計が国全体の状況を反映しているわけではない。さらに、コカインにフェンタニルが含まれるといっても、ごく微量であれば致死量には達しない。
ストリートドラッグに含まれる危険な混合物の検査・注意喚起の取り組みを主導しているノースカロライナ大学の科学者ナバラン・ダスグプタ(Nabarun Dasgupta) は、彼の実験室の予備データから、ニューヨークやノースカロライナのサンプルのうち約10〜20%がコカインとフェンタニルの両方を含むことが明らかになったという。その2つが検出されたのは、ほとんどが客が承知の上で買い求めた混合物や主にヘロインとフェンタニルから成る粉末だった。
「見ただけでは製造の意図(=薬物に別の依存性薬物を加えること)はわかりません」と彼は説明する。
それでも、ダスグプタは注意喚起に至るだけの十分な証拠を目にしてきた。「私が法執行機関と意見が一致することはほとんどないのですが、今回に限ってはそうです」と彼は語る。「脅すわけではありませんが、コカインを使っていることを知っている知人には、事前にフェンタニル試験紙を使うことを勧めています。そうするのが理に適っていると思うので」
米国の他の都市では、コカインへのフェンタニル混入への懸念が、専門家による裏付けのない、過剰な警戒を呼んでいる。ここ数ヶ月、ワシントンD.C.を拠点とするハームリダクションのボランティア、ジェイド(Jade)は、粉末コカインの使用者に「ごく少量のクラック・コカイン」を喫煙するように呼びかけているという。クラックにフェンタニルが含まれれば、喫煙中にいくらか燃焼するためだ、と彼は説明する。
「僕たちがより依存性の高い方法での使用を推奨している例は、これだけです。異物が混入した薬物ですから」とジェイドはいう。
クリーブランド大学病院の毒物学・依存症診療科長、ライアン・マリノ(Ryan Marino)医師は、より安全な方法としてクラックの喫煙を勧めることはないが、フェンタニルが混入したコカインへの注意喚起は大切だと考えている。クラックにフェンタニルが入っていれば死に至る可能性もある、と医師は指摘する。さらに、鼻から吸い込むより喫煙したほうが、さらに使用量が増加し、耐性が強くなるため、依存症につながる可能性が高いという。
マリノ医師も他の人びとも、使用者が情報に基づく選択ができるように、より多くの公衆衛生サービスが薬物に含まれる成分について説明することが最善だと語った。
現状を踏まえ、命を救うために、米国にはすでにフェンタニル試験紙やナロキソンをトイレに置いているバーやクラブもある。カナダでは、初めて使用する際に薬の成分を調べられる薬物検査サービスが実施されている。
コカインの供給に規制が設けられ、オピオイドのような専門家が管理する消費サイトが設けられることが理想だ、とマリノ医師は語る。
現時点で、悪質な──もしくは死に至る恐れのある──コカインとの出会いは、主に予算、売人、偶然によるところが大きい。十分なお金と信頼できるコネクションのある幸運な人びとは、比較的安全といえるだろう。しかし、末端の売人から1回分のコカインを買う人びとにとって、もしくはもっと高い値段でも初めての業者から購入する場合、すべては運次第だ。
「まさかと思うかもしれないが、それを紙切れの上に広げたとき、なんとなく大丈夫だと思ってしまう」とジェイソンはいう。「でも、結局はドラッグだ。あんたは非合理的な体験に金を払ってる。自分を解き放ち、人生に狂気じみたものを求める体験にね」