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「eスポーツ」って何

All photos from the EGL’s “Battle of Europe” by Lewis Farley

2016年3月30日、「日本プロeスポーツ連盟」の設立が発表された。同連盟は「『ゲームをプロスポーツに、ゲーマーをプロアスリートに』というビジョンの元、これまで国内でeスポーツの普及に携わってきました、eスポーツプレイヤー、チームオーナー、大会オーガナイザー、スポンサー、教育機関が一体となり、新たにプロeスポーツの業界団体を設立することになりました。業界の垣根を越えた団体の活動を通し、プロeスポーツアスリートの育成とeスポーツの裾野拡大の環境整備を推進してまいります」とWEBサイトで宣誓している。

なぜ、「ゲームがプロスポーツ」で「ゲーマーがプロアスリート」でなくてはならないのか。「日本プロeスポーツ連盟」設立会見では、韓国のプロゲーマーにプロアスリートビザが発給された、とも発表された。ニュージランドの元プロゲーマー、マックによると、「正直なところ、すべてはメディアが仕立て上げ、イベントがスポーツのそれを模して運営されているからでしょう。ESPNが運営に乗り込んだ影響も大きいでしょう。そんな現状が、行く末を暗示している」らしいが、今後、ゲームが誰もが認めるスポーツになる日がくるのだろうか。

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世界中で「eスポーツ」と呼ばれる事象は一体何なのか。「eスポーツ」全く知らない向きには、その何たるかを知るキッカケになるであろう、2015年2月、VICE UKで紹介されたイギリス人ゲーマーのインタビューを紹介したい。

***私は30年以上ビデオゲームをプレイしてきた。eスポーツはビデオゲームから派生した急成長中の産業であるのも重々承知している。eスポーツは従来のゲーム・ビジネスから派生し、世界中で市民権をえつつあるが、私はeスポーツの詳細ついて全く知らない。ビッグ・トーナメントは年々増え続け大会の優勝賞金は膨れに膨れて数百万ドル(数億円)にも上る「eスポーツ」は注目されて叱るべきだ。

私は1組のeスポーツの専門家を取材した。グレン・エリオット(Glen Elliott)は欧州ゲームリーグ(European Gaming League、以下、EGL)の創設者である。EGLは「ゲーマーによる、ゲーマーのための」組織で、イギリス国内はもとよりヨーロッパ大陸でのeスポーツトーナメント、複数のオンラインイベント振興を担っている。2014年暮れから2015年の初頭にかけてEGLは拡大しており、東アジアやアメリカの巨大なゲームリーグと肩を並べるほどになった。登録名「Buk20」としても知られている、アレックス・バック(Alex Buck)はプロの『ヘイロー(HALO)』プレイヤーであり、2008年に発足したヨーロッパ全域をカバーするeスポーツチーム「EPSILON ESPORTS」のメンバーでもある。

私はEGL主催で2015年2月22日に行われた『ヘイロー』優勝決定シリーズ「Battle of Europe」での頂上決戦を前に2人に質問した。大西洋を制したチームは、優勝賞金11,300ドル(約125万円)を手にするのみならず、2015年3月7日、8日にボストンで開催されたアメリカでの『ヘイロー』優勝決定シリーズファイナルに出場する権利が与えられるのだ。

“Battle of Europe”ステージに上がったEpsilon Esports

EGLの全容について教えてください。

Glen Elliott: EGLは2010年創設されました。もともと金融業界にいたのですが、仕事に飽きてしまいました。私はずっとゲーマーでしたし、数年間eスポーツの動向を追っていました。それで、ヨーロッパでは、コンソールゲーム機を使用するeスポーツイベントが開催されていない、という事実に気付きました。アメリカではメジャーリーグ・ゲーミング(Major League Gaming、以下、MLG)が急激に拡大していましたので、僕はいくらか投資して、2010年7月に初めてのEGLイベントを開催しました。それ以降、参加チーム数ではヨーロッパ最大のコンソールゲーム機を使用するeスポーツリーグに成長しました。EGLは、ほぼ予算ゼロ、フルタイムのスタッフがいない状態から始まりました。2014年、僕はEGL発展に尽力する決断をし、僕たちが理想とする規模に見合った資本を調達し、広告代理店のバートル・ボーグル・へガーティ(Bartle Bogle Hegarty)の投資を受けるべくミーティングするチャンスにも恵まれました。それ以降、目標達成に向けて邁進しています。

イギリス国内でのeスポーツ・イベントは、東アジアやアメリカでのイベントと比べて規模があまり大きくありません。その理由を教えて下さい。

Alex Buck: 単純に、アメリカではeスポーツが世間の注目を集めているからです。また、イギリスのゲーム会社より大きなゲーム会社があります。MLGもありますし、PCを用いたeスポーツ組織もたくさんありますから、たくさんのスポンサーを獲得し、参加チーム、ゲーマーたちを金銭面で支援できるんですよ。フルタイムのゲーマーに対する報奨が充実していますね。

ビデオゲームをフルタイムでプレイする、というアイデアは、今のところ突拍子もなく聞こえます。ゲーマーであるのを家族や友人に説明すると、どんな反応がありましたか?

キャリアをスタートさせた当初、まだ中学生でしたから、とても冷ややかな目で見られました。『ヘイロー』のトーナメントに始めて参加したのは15歳で、XLEAGUE.TVのプレイオフで2位になりました。個人としてはおおよそ930ドル(約10万円)の賞金を手にし、チーム全体では3,000ドル(約33万円)以上の賞金を獲得しました。ひとりでイベントに参加できる齢ではありませんでしたから、両親同伴で参加しました。親は、その大会やその後、僕が出場した大会を目にして、eスポーツの規模がどれだけ大きいか、ゲームに時間を費やす価値があるのに気付いたんでしょう。両親は、僕がストリートでたむろするよりも、家で『ヘイロー』をやってるほうが、まだ安心なようです。

Epsilon vs. Vibe

以前、東アジアで開催されたeスポーツの映像を観たんですが、何人かのゲーマーが大勢のファンに揉みくちゃにされていました。ヨーロッパでのeスポーツの競争力を注目度とともに高めていくには、著名なスター・ゲーマーが必要なのでしょうか?

Elliot: 間違いなく必要です。僕たちには、ゲーム界のベッカムになれるようなスターが必要です。ゲームで大成功を収め、誰もが知っているようなスター・ゲーマーが必要なんです。実際、スコットランドには歴代最高のリーグ・オブ・レジェンド(League of Legends)「スヌーピー(Snoopeh、本名Stephen Ellis)」がいます。彼はプロになるために渡米しました。彼は、このシーンでは偉大な人物で、活躍もしていますが、街ですれ違う誰かに「スヌーピーを知っているか?」と質問しても、「漫画の犬?」という答えが返ってきます。彼はプレイヤーとしては23歳で引退していますが、『リーグ・オブ・レジェンド』でプレゼンターと解説者を務めています。しかし、彼以上に世間に顔が利くスター・ゲーマーがいなければいけません。そのうち、スターが現れるでしょう。

イギリスの報道機関もeスポーツの発展の足を引っ張っているのでしょうか? 主要メディアでeスポーツはほとんど報道されていませんね。

主要メディアによるeスポーツの扱いはまだまだです。夏にBBCでeスポーツ・イベントをレポートしましたが、レポーターはその場に居たくないかのようでした。数千ものファンが熱狂するのはどうしてか、と理解するふうでもなく、ゲーマーを冒涜しているようでした。でもその一方で、eスポーツをきちんと評価しようとする、積極的な報道もありました。eスポーツにピンときていない、保守的なジャーナリストがたくさんいます。おそらく彼らは、eスポーツを扱いあぐねているのか、全く興味がないんでしょう。

プロのeスポーツ・アスリートになるには、どんな条件があるんですか?

Buck: 日中は働いています。なので、通常ゲームするのは夜です。トーナメントに出場するには、少なくとも、毎晩、仕事後に、少なくとも3時間はプレイしないとダメですね。「Battle of Europe」に向けて、もっとたくさんやります。午後7時に仕事からもどり、深夜まで続けますよ。キツイですから、努力が報われれば幸いです。

eスポーツを、本来のスポーツのように語るのは奇妙な気がします。いわゆるスポーツらしくねいですからね。とはいえ、練習、本番とたくさんプレイしなければなりません。しかも、トップレベルの相手と対戦するのが重要です。ハイレベルな相手と対戦しない限り、いくら毎日練習したところで、ゲーマーとして成長できません。

“Battle of Europe”を制したチームVibe

オンラインでプレイするだけで、大きな大会に欠かせないチームワークは鍛えられますか?

僕の場合、オンラインでゲームするのは、チームとしてでなく個人です。そのほうが練習になります。『ヘイロー』のチームは、サッカー・チームのようで、毎年、チーム間で選手が移籍します。とはいえ、ゲームを通して、とあるチームメイトを6年前(2015年2月現在)から知っていますし、他の2名とはおよそ1年半前から知り合いです。通常の練習では、ひとりでオンラインでプレイします。イベントが近くなると、僕たちは同じ部屋に集まってプレイしたり、疑似トーナメントをします。そうやって練習した結果、先週末にパリで開催されたトーナメントで優勝できました。フランスのベストチームもそのトーナメントに参加していたので、EGLトーナメントに向けたいい練習になりました。

トーナメントで対戦するチームをリサーチするんですか?

僕たちは、いつでも他のチームを想定していますから、いくつものスタイルに適応できます。昨晩は最近の対戦を振り返り、相手チームがどうプレイしたのかレビューしました。対戦後は動画を見直すので、マズかった点、次回に向けての改善点がわかりますし、相手チームのプレイも解析します。

eスポーツのゲーマーたちは、どうしてひとつのゲームにこだわるんですか?

Elliot: 複数のゲームをプレイしたり、いくつものゲームを上手にこなすゲーマーはほとんどいません。ゲームの世界はとても閉鎖的になりがちですし、「eスポーツ」とは単に一般的な言葉であり、ゲームそれぞれが個別のスポーツです。また、ファンたちも閉鎖的です。たまに、『コール・オブ・デューティー(Call od Duty)』のファンたちがオンラインで、『ヘイロー』は糞ゲーだ、と攻撃してきます。でも、複数のゲームを扱う1歩先をゆくイベントもありますが、ファンの大勢は自らのテリトリーにとどまり、その内のファンとだけ交流していますね。ゲームの枠を越えるのは難しいですが、eスポーツの発展とともに、ファンベースが枝分かれしていくのを目にするのは面白いですよ。

“Battle of Europe”での対戦に湧く観客

プロとして通用するゲーマーと、プロになりたがっているゲーマー間に壁はあるんですか? 写真を見ると野郎ばかりですが、シーンには差別があるんですか?

eスポーツに差別があったらダメですね。アジアの大会で、ゲイやトランスジェンダーの参加を制限した、というニュースが届きましたが、本当に馬鹿げていますよ。僕たちのトーナメントには、女性チーム、男女混合チームも参加します。ゲームは制限のない平等なもので、上手下手関係なく楽しむべきだ、と僕は信じています。見習うべき素晴らしいeスポーツ・ウーマンもいます。ただ、彼女たちはもっとプロモーションされるべきです。北アイルランドには、普段は助産師の仕事をしているすごくクールな女性『バトルフィールド(Battlefield)』ゲーマーがいます。

Buck: 目立ちたいだけで出場している、と思われるのが嫌でイベントへ参加を見合わせる女子ゲーマーもいるのではないでしょうか。でも、そんなこと気にせずに、トーナメントで男子ゲーマーと互角に渡り合い、真摯にゲームに取り組めば、彼女たちは間違いなく受け入れられるハズですよ。

eスポーツはどこまで大きくなりますか? オンラインでは巨大ですが、TVのようなメディアではほとんど取り上げられていませんね。

Elliot: どう啓蒙するかが重要でしょうね。加えて、ヨーロッパのeスポーツ界に、大手企業を数社でもいいから呼び込めれば、オンライン以外のオーディエンスにも認知してもらえるはずです。もし複数のブランドが参入してくれれば、ヨーロッパのeスポーツ市場は安定するはずです。その上、eスポーツ企業もプロフェッショナルな運営をしなければなりません。コカ・コーラがスポンサーにつくのを拒否すれば、イベントは惨憺たる結果に終わるでしょう。僕たちは、コツコツやらざるを得ません。出来たばかりのマーケットでしたから、商才のある経験豊富なビジネスマンもいませんので、eスポーツは、ここ何年かのうちに数回も発展するチャンスを逃しています。高額な賞金を騙ってトンズラした企業もありました。それに、大きなスポンサー企業は基本的に無法者が運営するマーケットには参入しませんよね。

Buck: eスポーツにとって、TVが最適なメディアかどうかはわかりませんが、メインストリームのオーディエンスをカバーしているので、ゲームがいかなるもので、ゲーマーたちがいかにプロフェッショナルにそれをプレイするのか、理解するには有効なメディアだと思います。世間はプロゲーマーのレベルを理解していません。プロゲーマーは誰も見たことのないようなプレイをします。それは、ただ座って1〜2時間ゲームするのとは次元が違います。そんなレベルでプレイするには、相当な練習と覚悟が要るうえに、技術的に秀でた個人でありながらチームのいち員でなければなりません。ですから、eスポーツが大きくなるには、然るべきゲーム教育が不可欠です。