知っているひともいるだろうが、ヴァギナには数百億の細菌が存在している。この正式名称は膣内細菌叢だが、個人的には〈プッシー・ポッセ(Pussy Posse)〉と呼びたい。これは1990年代、レオナルド・ディカプリオを筆頭に、ハリウッドで遊び回っていたプレイボーイ集団の呼び名だが、ここで語りたいのは彼の武勇伝ではなく、ヴァギナで悪性の細菌の繁殖や増殖を防ぐ膣内細菌のことだ。7割の女性のヴァギナで主要な力をもつのが、ラクトバチルス属という菌。この菌が乳酸を生成し、膣内pH値を4.5以下に保っている。
ラクトバチルス属の菌は、腸内にも存在する。人間の腸内細菌はプロバイオティクスと呼ばれ、これらの菌は、食べ物の消化からアレルギー、湿疹、アルツハイマー病まで、あらゆるものに影響を及ぼすとされている。腸内細菌の重要性にまつわる研究は枚挙に暇がなく、市場には腸の働きを助けると謳う商品が溢れている。プロバイオティクスは、ヨーグルトなどの食品だけでなく、シャンプーやシェービングクリームなどにも使用されている。
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しかし私は、みんながもっと単純なライフハックを見逃しているように思えて仕方ない。ヴァギナは善玉菌の宝庫だ。普段から善玉菌の摂取を心掛けているなら、ヴァギナを舐めればいいのではないか?
「確かにそうかもしれませんが、実践するひとは少ないでしょうね」というのは、米ミネソタ州にあるメイヨー・クリニック(Mayo Clinic)のヘレナ・メンデス=ソアレス(Helena Mendes-Soares)医師だ。「私自身、そのテーマに取り組んだ研究はひとつも知りません」。なぜないのか、私にはわからない。
ヴァギナは善玉菌の宝庫だ。普段から善玉菌の摂取を心掛けているなら、ヴァギナを舐めればいいのではないか?
膣液が有効なプロバイオティクスとなるには、充分な量の善玉菌を含んでいる必要がある。カナダとイタリアの規定では、一食あたり10億CFU(コロニー形成単位:生きて増殖できる微生物の数)だ。さらに、これらの菌は胃酸によって溶かされることなく、生きたまま腸の下部(善玉菌が生息する場所)に到達しなければならない。
では、〈ヴァギナ一食分〉にはどれくらいの菌が含まれるのか。また、それは具体的にどのくらいの量になるのだろう。 メンデス=ソアレス医師によると、膣液1グラムに含まれるラクトバチルス属の菌は、約10万〜1億個。つまり、1回のオーラルセックスで必要なプロバイオティクスを摂取するには、10〜1万グラム(=10kg)の膣液を飲み込む必要がある。10グラムなら大したことはないが、10kgは無理そうだ。
仮に、あなたが善玉菌が豊富な膣の持ち主で、あなたのパートナーが飲み込まなければいけない量は、10グラムだけだとする。その10グラムが生きたまま腸に到達したか、どうすれば調べられるのだろう。2005年の研究では、胃液中のブドウ糖が、胃腸でラクトバチルス属の菌を守る働きをすることがわかった。膣液に含まれるブドウ糖の量は不明だが、直前に何かを摂取することで、胃液中で必要な糖を補うことはできる。さらに、ラクトバチルス属の菌はもともと耐酸性なので、ブドウ糖の助けがなくても、口から腸に到達できる可能性はある。
しかし、ここで別の問題が浮上する。他人のプロバイオティクスをそのまま摂取すると、細菌汚染のリスクがあるのだ。オーラルセックスのさい、「生殖器に存在する別の菌が伝播するかもしれません」とメンデス=ソアレス医師は指摘する。「良性と悪性、両方です」。つまり、ラクトバチルス属の菌と同時に、別の悪玉菌を摂取する可能性があるのだ。もちろん、性病の危険も考慮しなければいけない。
また、プロバイオティクスという言葉自体に引っかかりを覚えるひともいるかもしれない。感染症専門医/ポッドキャスターのマーク・クリスリップ(Mark Crislip)は、2009年のブログ記事で、プロバイオティクス業界全体に大きな疑問を呈した。彼の主な主張は、プロバイオティクスに含まれるラクトバチルス属の菌やビフィズス菌は、必ずしも人間の体内の菌と同じ種類とは限らない、というもの。しかしこの点に関しては、膣液は、プロバイオティック・ヨーグルトの〈Activia〉と同じといえる。人間の体内で発見された菌なのだから、体内の他の菌と同じ種類なのは当然だ。私たちは〈供給元〉に直行しさえすればいい。
ActiviaのCMでジェイミー・リー・カーティス(Jamie Lee Curtis)が宣伝するほど、プロバイオティクスに効果があるかはまだわからない。多くの研究が、プロバイオティクスが過敏性腸症候群や抗生物質による下痢など、胃腸の問題に有効であることを証明しているが、延命効果など、長期的な効能にまつわる科学的な証拠は、まだまだ少ない。いっぽう、ラクトバチルス属の菌のコレステロール低下作用にまつわる予備研究は、すでに実施されている。心臓疾患は米国の死因第1位なので、この研究はきっと有意義なものになるだろう。期待は大きいが、効果を実証するにはさらなる研究が必要だという。
今のところ、プロバイオティクス賛成派と反対派で意見が一致しているのは、プロバイオティクスは、定期的に摂取しさえすれば体内にとどまる、ということだ。ヴァギナもあらゆる食品と同じで、毎日の食事に取り入れることが、健康へのカギなのだ。
This article originally appeared on VICE US.