宇宙でのマスターベーションは可能なのか?

宇宙でのセックスには大いなる困難が予想されるが、自慰の場合はどうだろう?
Shamani Joshi
Mumbai, IN
AN
translated by Ai Nakayama
Tokyo, JP
宇宙でのマスターベーションは可能なのか
宇宙でのセックスには大いなる困難が予想されるが、自慰の場合はどうだろう? PHOTO Pixabay left Dainis Graveris / Unsplash (右)

※この記事は、VICE Indiaで掲載の記事を翻訳したものです。

2020年5月、イーロン・マスクのSpaceXが、民間企業で初めて国際宇宙ステーション(ISS)への有人飛行を成功させた。一般人も宇宙旅行ができる未来への道を開いた、歴史に残る偉業だ。

しかし地球を離れるときには、地上での所有物を一旦捨て去る必要がある。携帯電話や温かい食事などを我慢する分にはまあ構わないだろうが、基本的な人間の欲求は我慢できるだろうか? それは例えば、良質な睡眠や身体が必要とする休息、そしていちばん重要な、性生活だ。

宇宙が性交渉に適した環境ではないということは、これまでも散々言われてきた。無重力空間では好みの対位で抱き合うことも非常に難しいし、科学者やNASAの専門家は以前より、宇宙での任務中における性的関係がもたらす心理的影響に関して懐疑的な姿勢を貫いている。そのため、宇宙飛行士がセックスした、という噂は絶えず持ち上がっているものの、NASAやISSが宇宙空間でのセックスについての質問に答えることは非常に稀だ。ただ、宇宙での性交渉をつまびらかにするのは難しいとしても、古き良きマスターベーションならどうだろう?

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数年前、NASAのアドバイザーでセックス/ジェンダーヘルスの専門家、マージョリー・ジェンキンスが〈宇宙への適応におけるセックスとジェンダーの効果:リプロダクティブヘルス(Effects of Sex and Gender on Adaptations to Space: Reproductive Health)〉と題された論文で、泌尿生殖器の細菌感染につながるおそれがある前立腺での細菌増殖を防ぐため、射精は男性にとって重要だと主張した。マスターベーションは、ストレスや不安を和らげる優れた方法であるとする研究も数多い。プレッシャーの大きい宇宙での任務についている人間が、ある種の逃避行動を必要とするのも当然のことだ。

NASAの初期研究では、無重力環境で血流に変化が現れたり、逆流する可能性もあると指摘されている。下半身に流れるのではなく、頭部や胸部へと上昇するのだ。つまり宇宙空間では、ペニスの勃起が起こりにくいということになる。しかし、それとは逆の可能性を示唆する宇宙飛行士の証言もある。

2014年、マイケル・マランという宇宙飛行士が『Men's Health』誌のインタビューで、宇宙滞在の期間中、時折「クリプトナイトを貫けそうなくらいの勃起」をしていた、と発言。ロン・ガロンという宇宙飛行士は、Redditの〈Ask Me Anything(質問ある?)〉スレッドで、宇宙空間でペニスは勃起するのかという質問に、「地球上の人間の身体に起きる現象で、宇宙では起きないものなんて知らないな」と答えた。宇宙空間での欲情について語った女性はまだいないが、おそらく女性のマスターベーションはそこまで難しくないだろう。ただ、多くの宇宙飛行士は最初のうち、無重力空間で乗り物酔いやめまい、四肢をはじめとするあらゆる部位の感覚のマヒなどを経験することがあり、そのせいでマスターベーションの実行が阻まれる可能性がある。

宇宙飛行士たちのマスターベーション事情について沈黙を貫いているNASAと対照的なのが、ロシア人宇宙飛行士たちだ。ソビエト連邦時代の元宇宙飛行士、ワレリー・ポリャコフは、自らの日記に「心理的サポートサービス(Psychological Support Service)が、最高の〈カラフルな〉映画を送ってくれた。僕らの意志の回復、普通の成人男性としてのふるまいを助けてくれる映画だ。恥じることは何もない」と記した。またポリャコフは、ロシアの宇宙ステーション〈ミール〉における史上最長の14ヶ月にも及ぶ単独宇宙滞在に挑むさい、空気を入れて膨らませるタイプのセックスドールを持っていくように先輩飛行士から勧められたそうだが、彼はこう述べている。「(僕は)その解決策を強く固辞した。そういったものを使うと〈人形症候群〉と呼ばれる症状をこじらせてしまう、つまり地球に戻ったあと、配偶者や恋人よりドールを好むようになってしまう可能性があるからだ」

アレクサンドル・ラヴェイキンという宇宙飛行士は、メアリー・ローチの著書『わたしを宇宙に連れてって 〜無重力生活への挑戦』でこのように語っている。「みんなしていることだし、みんな理解している。何のことはない。友人に『宇宙ではどうやってセックスするの?』と訊かれたら、僕は『手で!』と答えるよ」。ラヴェイキンは「さまざまな可能性がある」と述べ、自らの夢精経験もほのめかした。

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NASAと仕事をしている匿名の物理学者が、ウェブサイト〈Mel Magazine〉の

インタビューで語ったところによると、宇宙飛行士は宇宙船内での「軽装」の

ドレスコードのおかげで自らの身体にいともたやすく触れられるようだ。また、船内に取り付けられたカメラは自分たちで調整できることを多くの宇宙飛行士が認めているため、シャワーを浴びている時や電話ボックスサイズの寝床で、誰にもバレずに自慰を行うことは比較的簡単なはずだ。QuoraやRedditでは、宇宙船の中という完全なプライバシーがない空間でも、陸軍では一般的となっているらしい「見て見ぬふり」戦略を選ぶことは可能だろう、と多くのユーザーが推察している。

最後に、宇宙飛行士がマスターベーションできたとして、排出された精液や体液はどうなるのか、という問題だが、宇宙船内にあるティッシュや布巾を使うのではなく、尿と同様に処理されるはずだ。つまり、宇宙空間に捨てて、氷の結晶に変えてしまう。我々が想像するような〈ビッグバン〉は起こらないようだ。

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