純度の高いドラッグであればあるほど、より深い快楽へと誘うように、表現の世界でも、ピュア性が高ければ高いほど、人の心を突き動かすはずだ。舐達麻が追い求めるのは、そんな混じりけのない世界。
舐達麻が舐達麻たる由縁を探るため、彼らの地元である埼玉県熊谷市に向かった。
今すごく注目されてきてると思うんですが、実感ってありますか?
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賽 a.k.a.BADSAI KUSH(以下B):えっと。。。注目されたタイミングっていつなんですかね。
実感がないってことですか?
B:はい。まだきてないですね。
個人的な肌感かもしれないですが、周りでもよく話題にあがります。
B:正直、金は超入ってきてます。だけど、今月その金が止まれば、注目されたとしても色物としてってことだから。バズるっていっても、実力か、面白おかしくてバズったのか、そのどっちかしかないと思ってて。色物っていうのは、そのとき、時代にマッチしただけで、実力も何も追いついてないから、淘汰される仕組みになってる。実力のある奴は、ずっとコツコツ積み上げて、そこのレベルに到達したら、絶対次から下回ることはないと思うんです。たまたま上手くいくなんてありえないんですよ。
俺たちは色物じゃないって思ってるけど、世間はどう思ってるかわからないから、次の曲も、その次の曲も、その次の曲もバズんなきゃ、絶対意味ないんです。今、色物としてみられて注目されてるんだとしたら、俺は、そんなの絶対にされたくないし、そうじゃないと信じたいし。
なるほど。もっともっと高みしか見てないってことですね。
B:THE TIMERS、THE BLUE HEARTS、尾崎豊とかみたいに言われたいんですよね。そうなるにはどうすればいいか、真剣に考えてみたんですけど、本当に『LifeStash』や『FLOATIN’』とか、ああいう曲以上のモノを、1年に2、3曲出しつ続けていかないとダメなんですよ。日本語ラップの世界で、それをやり続けた人っていないし、やり続けるのは、すごい難しいけど、止まる気ないし。
バダサイさんのなかでの〈良い曲〉の概念を教えてください。
B:言葉にして説明できないですけど、まず、今まで聴いたことがないくらい、ヤバいビートじゃなきゃダメなんですよ。ビートを選ぶ段階で、俺のなかで120点叩き出した楽曲なら、世間では80点はいってると思うし。ビートが120点だとしたら、あとは自分たちにできる100点を出すだけで、仲間たちの100点は、大体わかるじゃないですか。俺たちの場合は、今3人でつくってるんで、みんな自分のバースで100点出して。それが、良い曲かどうかっていうのは、なんの判断になるのか、わからないけど。
ビートの話が出ましたが、最近よく聴くヒップホップのアーティストはいるんですか?
B:普通にGREEN ASSASSIN DOLLAR(グリーン・アサシン・ダラー)かな。
仲間だからですか?
仲間だからとかじゃないっすよ。そもそも、普段ラップ聴かないんで。音楽も流しとくみたいな。ずっと流しときますけど、そんな真剣に聴かないし、まして他人のラップは聴かないですね。
もちろん、自分がチェックしようとしなくても、誰かの新譜が出て、YouTube、Twitter、インスタ開けばわかるじゃないですか?で、ちょっとバズったか、チョーバズってるか、ずっとバズってるか、あるじゃないですか?そこそこバズってるなって思ったらチェックはします。別に好き嫌いじゃないけど、よくなかったら5秒くらいで速攻消しますけど。
ただ、他人のラップを聴くってことは、聴いて理解して消化するってことじゃないですか。それ他人のでやっちゃったら、自分でやるとき、絶対そいつのが入ってくるじゃないですか?
見たり聴いたり触れたりしたものすべてが、勝手に自分の体にインプットされて、無意識のうちに出てきちゃったりしますからね。
B:まったく違う畑だったらいいかもしれないですけど。気づかないうちにやっちゃうから絶対。
G-PLANTS(以下G):俺も聞かんすよ。影響とかまで考えてないですけど、自分がっていうのは一切抜きにして、聴く側の目線にまわったら、日本のアーティストでは、痺れるアーティストが、あんまいないっすよね。
DELTA 9 KID(以下D):自分たちが、たいした音楽をつくってるとかじゃなくてね。
G:昔みたいにCD出たら、絶対買うとか、トレーラー出て、いつ発売されるんだとか、そういうのが、もうなくなったっていうか。
それは自分たちが、やり始めたことと関係してるんじゃないですか?
B:それは絶対あると思いますよ。気付いてないだけで。
自分たちの楽曲は、自分たちが1番良いって思うことをやってるから、別に他のアーティストを聴く必要もないですもんね。
B:でも、自分たちが1番なんて、まったく思ってないですよ。世の中の点数でいえば、俺たち33点くらいじゃないすか。
G:赤点ギリギリですよ。
B:赤点って何点?
G:30点。
B:だとしたらギリギリ免れてるかもね(笑)。
じゃ、自分たちが、他のアーティストにも影響されない状態、つまりニュートラルな状態でいて、それを楽曲にするってことが一番大事ってことですね。
G:大事っていうか、確かにそれが絶対大事ですね。それじゃなきゃ、意味がないじゃないですか。
ニュートラルであろうとすることは、自分たちを誇張したりしないってことですよね?でも、よく見せたいって欲求もありますよね?
B:それは俺は言い方でしますね。例えば「ジョイントに火をつける」って言えばいいだけのことを、例えば、チョーカッコつけて「橙色に染める」とか。カッコつけたい欲は、起きたことではなくて、起きたことの説明の仕方でカッコつけて、むしろ、それがいいことだと思うんで。起きたことを誇張しても意味ないってのもわかってるし、そもそも誇張したら、大体みんな同じとこに、いきつくと思うんですよ。そんな意見聴きたくないし。
それに、言いたくないことほど、今でも言いづらいけど、それを言った方が絶対売れる。それが弱さであっても、絶対。
自分たちのありのままを強く信じれるんですね。
B:自分たちがやってることは、自分の感覚の話なので、芸術じゃないですか。芸術っていうのは自分の感覚を目に見える形で出すだけじゃないですか。それの正解ってないじゃないですか。千差万別じゃないですか。でも正解ってあるんです。それは、俺の表現だとしたら、俺の考えです。俺がこう思ったことを、こうするっていうのは、絶対間違いないじゃないですか。あなたにとっては知りませんけど、俺にとってはそう思ったから。
まさに、その通りで、個人的にはピュアな表現だけが、人の心を動かす、と信じてる部分があります。
B:それしか動かないっすよ。それに、例えば、インタビューをして原稿を書くのは、俺は普通の仕事ではないと思うんですよ。文章の羅列をつくるのも、創造するということにおいて、芸術的なことだと思うんですよ。俺は、それを全員が全員、何かしらした方がいいと思うんですよ。絵を描いたり、小説書いたり、ビートをつくるでも、写真を撮るでも。俺はラップだし、それは絶対した方がいいっすよね。
そうすることで、自分の歪んでる部分とか、人間の消化しなきゃいけない部分を、自分なりに消化できると思うんですよ。消化しないと、嫌な部分とかも含めて、他人にぶつけてしまうと思うんですよね。
それに、昔は全員してたと思うんですよ。それこそ、家で絵を描いて、人に見せてないだけで、それが仕事じゃないとしても、創造することは、絶対人間はした方がいいと思うんで。そうすれば、人間の良い部分だけをみれるようになって、他人と付き合えるんじゃないかって。すごい極論ですけど思うんですよね。
確かに、その通りですね。
B:しかも、創造して自分を磨くのは、自分のためなのに、それがアーティストとして成り立つんだとしたら、チョー楽だし、チョー効率イイじゃんって思うんですよ。単に、自分のためにやってるのに、実際俺たちの曲を聴いて、これから懲役いくやつとか、懲役いってるやつとか、まったく違う別のジャンルのやつも、励まされたヤツがいたと思うんですよね、知らんけど。
俺たちが勝手にやってることで、そいつらが元気になったりしてるとしたら、この世の中でポジティブなことが生まれてるだけじゃないですか。俺は自分のことを磨いてるだけなのに、磨けば磨くほど、周りで、俺の知らないところで、それが起こるんだとしたら、それってもう革命レベルにヤバイことじゃないですか。だったらやったほうがいいっすよ。みんなも、そうしたほうがいい。
なるほど。面白い考え方ですね。そもそもラップを始めたきっかけってなんだったんですか?
G:みんなバラバラなんですけど自分は19歳のときに、一緒にいた先輩に、「リリック書いてみろよ」みたいなノリで書いた感じっす。
ヒップホップは、もともと好きだったんですか?
G::中学生くらいから、スヌープドックとか西海岸のアーティストとかのCD買って。ヘッズみたいな感じです。
日本のアーティストは、あんまり聴いてなかったんですか?
G:そんなでもないですけど、すごい聴いてたっていうアーティストはいないですね。高校生のときに、俺の友達の家に居候してきた友達のいとこの彼氏みたいな、すげえ複雑なんですけど(笑)、ヒップホップ詳しい先輩がいて、その先輩の車で流れたのが、それこそウータン・クランとか、ビギー、2Pacとか、洋楽のアーティストだったんで。その先輩に教えてもらったのがはじまりでした。
2人はどうですか?
B:音楽は、そんなに聴いてなかったですね。18歳のときに俺たち別々でキャデラックを買ったんですよ。アメ車買ったらヒップホップ流したいじゃないですか(笑)。それでCDを焼いてもらってかけてましたね。それでこいつ(DELTA 9 KID)が跳ねるキャデラック買って。
なるほど(笑)。そもそも、なぜキャデラックだったんですか?
B:18歳くらいになると、みんなはセルシオとかクラウンとか買うんですよ。それはないなって思ってたっていうのと、ここらへんって、10個くらい上の世代で、アメ車ブームがあったんですよ。で、深谷にYtecっていうアメ車屋があるんですけど、そこの社長が跳ねるやつで、結構日本記録とか持ってるような人で、ヒップホップも詳しかったから、遊びに行って教えてもらったりしてました。
アメ車とかアメリカンカルチャーにハマるんですか?
B:別にアメリカンカルチャーが好きなんじゃなくて、形としてあの車カッコ良くない?みたいな感じで。それに手を出せる値段だったから。
先ほどの話にもあったように、自分のニュートラルな状態っていうのは、体験したことが染みついて、今につながってるってことでもあると思うんですけど、そもそも、ヒップホップに興味を持つ前は、どんな子供だったんですか?
B:小学校1年生のときからサッカーをはじめて、2年生まではチョー上手くてっていうか、めっちゃ足早かったんです。それで1試合5点とか入れてたんですよ、やばくないっすか(笑)。 小学校3年生くらいになると、みんなに追いつかれるようになって、そしたら全然点がとれなくなって、途中でベンチにもなって。多分はじめたときは楽しかったと思うんですけど、そっからつまらなくなって。けど、毎日のルーティンに組み込まれてることってやってしまうじゃないですか。
だから普通に中学になっても、サッカー部に入ったんですけど、3ヶ月くらいで部活に行かなくていいやって思って、家帰ったんですよね。そしたら当然なんですけど、誰も文句を言わなかったんです。今まではルーティンに縛られて生活してたんですけど、誰も文句を言わないんだったら好きにやってもいいのかなって。それで、学校とかにも行かなくなったんです。そしたら、もうすでに学校に来てないヤツがいて、それがこいつ(DELTA 9 KID)だったんですよ(笑)。そっからもう急に仲良くなって、学校に行ったとしても、途中でもう帰ろうかって2人でチャリンコに乗ってたら、警察に追われて。学校に通ってる時間に、街にいること自体がおかしいから。中1くらいから、そういうのがはじまったっすね。
サッカー部だけでなく、なんで学校にも行かなくなったんですか?
B:いや単純に起きれないとか。
D:そっち系だよね、普通に。楽しくないから。
B:俺の場合は、親が離婚してて、家に母ちゃんしかいなくて、母ちゃんは、俺が学校に登校しなくちゃいけない時間より先に家を出ていくんです。それで帰ってくるのが夜じゃないですか。行こうが行かまいが、どうにもならなくないですか。しかも母ちゃん中卒で、養育費とかももらってないし、働くしかないんですよ。俺ん家は4兄弟なんですけど、息子ひとりくらいグレたからってかまってられないんです。俺も子供だったから、好き放題できたし。こいつ(DELTA 9 KID)は父ちゃん、母ちゃん働いてて家にいなかったんだよね。2泊くらい帰ってこないみたいな。
じゃ、反発みたいなことですか?
B:反発ではないっすね。世間的にはグレてるって言われてるのはわかってたし、ヤンキーだし。だけど捕まって鑑別所とか少年院行ったりすると、非行に走った理由を書かされるんですけど、非行に走ってないって思うんですよ。お前らの言い分もわかるんだけど、法に触れて好き勝手やってたら非行少年のように見えるかもしれないけど、ただ、それがやりたくてそうしてるだけで、学校に行かなくて遊んでるほうが楽しいじゃないですか。それに共鳴するヤツらも現れるし。隣の中学のヤンキーで学校に行かなくなったヤツと仲良くなって、俺ん家に朝7時とかに入ってくるんですよ。
朝7時。。。早くないっすか(笑)?
B:俺もテンションブチあがっちゃうんですよ。で、8時9時になると、もう10人くらい集まってきて、そしたら楽しいじゃないですか。みんなで金出しあって、いかがわしい大人から原チャ買ってとか。そしたら、ガソリンメーターが壊れてて、途中で止まっちゃって。そういうのって学校行くより楽しいじゃないですか。そういう感覚のヤツらが、たくさんいたから、成り立っていたんですよ。
D:中学校の頃が一番楽しかったよね。今考えると。
他に、どんな遊びをしてたんですか?
B:夜中一緒に公園とかに集まって酒飲んでたよね。こいつ(DELTA 9 KID)に、はじめて酒飲ませたのも俺っすからね。それでゲロとか吐かせたり。
D:あのとき、チョーゲロ吐かされたんっすよ(笑)。
B:後は、やっぱカツアゲとかっすね。遊びっつうか、同い年くらいの生意気そうなヤツみつけてカツアゲしてました。負けたりとかもしてましたけどね。
その流れで暴走族になっていくんですね。
B:俺ん家の近所にヨーカドーがあるんですけど、そこでカツアゲとかしてて、ボンタンとか短ランとか着てたんですよ。そしたら、ヤンキーじゃないですか。別の中学校の同い年のヤツとあったりして、目とかつけてくるんですよ。けど、嫌な感じじゃなくて、やばいヤンキーいるみたいな。そいつが、もう暴走族入ってたみたいな。
で、暴走族になるきっかけは、俺が中学3年生のときに熊谷の花火大会に、みんなで行ったんですけど、そしたら、そいつもいて、他の暴走族の人たちも、みんないたんです。のちに俺の先輩となるマリファナとか置いてく先輩を紹介されて、そんときは挨拶しただけですけど、こっちもヤンキーだったし、やっぱ、そういう集団に憧れるじゃないですか。中学生で暴走族とかだったらヤベエなって。で、その数日後に入りましたね。
ボンタンと短ランって、まだ売ってたんですか?
B:ギリギリあったよね。
D:うん。
B:でも履いてるやついなかったよね。
D:うん。
つくれる場所はあったんですか?
B:いや俺は先輩に貰ったっす。だから持ってるヤツとかいないし、知ってる同世代で持ってるヤツなんていなかったよね?
G:うん。通販で買うみたいな感じだった(笑)。
2人はボンタンとか着てたんですか?
G:俺は普通の制服でした。
D:俺も履かないですね。
B:意外と私服でしたよ。学校行くとしたら、俺は基本的に私服でしたしね。だからボンタンとか短ランとか着て行くと先生に褒められました(笑)。
バイクは?
B:こいつは(DELTA 9 KID)は、単車つくってたよね?
D:うん。なんかいじるのが好きで。それで先輩とかが通ってるバイク屋さんみたいなのがあって、教えてもらって。自分でも最初チャンプロードとかで、旧車會の特集してんのとか見て。
B:100万払ってバイクこなかったりしたよね(笑)。 先輩に買わされて。
D:ローン組んで、きたはきたけど、最終的にないみたな。「もう1回ちゃんと作り直すから、預かっていい?」みたいな。それで、そのままこなかったっす。一時期きたんですけどね、勉強代でした(笑)。
高校生になると、どう変わるんですか?
B:悪化の一途を辿りますね(笑)。学校には1回行くんですよ。俺の場合、父ちゃんと母ちゃんが中卒なんで、母ちゃんが俺に高校行ってほしくて。その理由も「高校の修学旅行が、すごい楽しそうだったから、絶対行った方が良い」って言うんですよ(笑)。 けど、俺は中学が家からチョー近いのに、行けなかったじゃないですか。それなのに、高校なんて行けるはずないよって思ってたんですけど、入学だけはしてほしいみたいな。
で、なんで、こいつ(DELTA 9 KID)が、高校行ったかっていうと、俺が受験しようって無理矢理誘ったんですよ。絶対誰でも受かるっていわれてる学校を、友達たちと、みんなで受けたんですけど、そしたら、こいつ(DELTA 9 KID)しか、受かんなくて(笑)。たまたま、こいつが所属してたラグビー部が、全国大会に出てただけで、そこもバカ高だから、チョーアホでも、それがあれば受かったんですよ。で、こいつが「ユウタ(バダサイ)ふざけんなよ、あんなとこ通えないよ」みたいな(笑)。
D:遠いよーって。しかも寂しいじゃん。誰もいないし(笑)。
B:俺がその学校に落ちたから「もう1個、俺と同じ高校受験してよ」ってこいつ(DELTA 9 KID)に頼んで(笑)。で、違う彼(G-PLANTS)がいる高校に2人とも入学したんですけど、速攻終わって。こいつ(DELTA 9 KID)は、入学式しか行ってないんで、話が違うよとしか思ってないと思う(笑)。
D:不満しかなかったですね、 いい意味で(笑)。
高校にも行かなくなって、引き続き悪い遊びをしてたと思うんですけど、そういう行為をしていることが、カッコイイって感覚もあったんですか?
B:カッコイイってか、するしかないんですよ。例えば、仕事バックれた高橋ってのがいたんですけど、そいつは、なんの仕事でバックれたかっていうと、俺たちが17歳のときに、パチンコのサクラみたいな代打ちの仕事をしてて。そこの支配人と俺らの先輩がグルで、支配人がイイ設定の台を先輩に教えて、その台で俺たちに代打ちさせるんですよ。
その仕事って、パチンコ打つだけだから楽じゃないですか。楽だけど、その怖い人のやってる仕事だから、途中で気分で帰るとか、普通にありえないじゃないですか。けど、たまに舐めたやつが来るんですよ。俺パチンコ好きだから大丈夫みたいな。けど開店から終わりまで打つのチョーだるいから、大抵のヤツは、なんか言い訳つくって帰ろうとするんです。高橋の場合は、ガソリンスタンドでバイトしてたから、そのバイトがあるからとか言いだしたから「お前絶対帰んじゃねえぞ」って言ったんですけど、 普通に次の瞬間もういなくなってて、帰ったんですよ。それで、確か、俺ら金をおっつけられたのかな? その台で他の一般人が何十万か出したからって言われたのか覚えてないですけど「金よこせよ」って言われた気がする。そういう文化でしたね。
それは、もうカッコイイとかじゃないじゃないですか。だから、自分たちも同じことをするしか無かったって考えでしたね。
そもそも、なんで、そんなことしてたんですか?
B:金っすね。俺たちは全部金。カツアゲも、泥棒も金だし、全部金なんですよ。だけど、普通には働きたくなくて。胸をはれることではないのはわかってるけど、捕まって自分で罪を償うだけだから、しちゃいけないとは思わないですからね。
金庫泥棒もやってたんですよね。
B:金庫泥棒は、ひと晩で3軒入るとしたら、熊谷市に1件入ったら、管轄を変えて、深谷市に入って、次は本庄市に入ってみたいな。熊谷ばっかりにすると熊谷警察署で連携とれちゃうじゃないですか。だから、バラツキをとったりしますけど、県をまたいだりすると、よっぽど裏道とかじゃない限り、カメラがあったりするから、窃盗車だし。大体県北全域でやってましたね。 県北っていったら相当キャパ広いよね、絶対特定できない(笑)。
D:広いよね。
そうやって手にした金を何に使ってたんですか?
B:普通に生活費とか、車とか大麻とか買ってましたね。
大麻は、いつから吸いはじめるんですか?
B:17歳くらいからですね。でも、もともと家にあって。
どういうことですか?
2個上の兄貴の友達が、厳密にいうと別の暴走族に入ってて、俺の4つ上の先輩たちだったんですよ。で、俺が中学生のときに、みんなヤクザになるんですけど、シノギがないから、大麻とか扱ってるけど、大麻を自分の家に置けないじゃないですか。だから俺ん家に置いてて。
けど、俺はそんとき、暴走族だから、基本、薬物禁止じゃないですか。それに、勝手に吸ったら、ぶっ飛ばされるから、やらないじゃないですか。しかもラリルって思ってたし。だから興味もないまま、ずっと俺ん家に何百グラムかあったんですよ。
しばらくしたら、俺たちと同じ中学の1個上の女が、俺ん家に来て「大麻あんじゃん。ユウタくん、ちょっと吸おうよ」って言われて(笑)。別にいいけど、今から、どっか行こうって話してて、ちょっと面倒臭えなってときあるじゃないですか。大麻を吸うことは、嫌じゃないけど、状況が変わるのが面倒臭いから「別にいいけど夜になったら吸おう」って言って。夜になったら、もう一緒にいないだろうなって思ったんだけど、結局そのまま一緒にいて「そうだ!ユウタくん吸おうよ」って。そいつは、過去に吸ったことがあって、タバコの葉っぱと、大麻を詰めかえて吸ったんですよ。そしたら全然感じなくて。「ずっと息止めてなきゃいけない」とか言われるけど、息とか永遠に止めてられんだけど、いつまでだよ、みたいな(笑)。そんなこと人に言われながら吸うのも面倒臭いし「もういらねえよ、ごちゃごちゃうるせえな。全部吸っていいよ」って、女に渡したんですよ。そしたら、いきなり、パンって、めっちゃキマってて。ナニこれみたいな(笑)。で、後ろみたらその女が、めっちゃ目真っ赤にしながら泣いてて「なんで泣いてんの?」って聞いたら「私が吸いたい吸いたいって騒いでんのに、ユウタくん全然キマってない」とか言われて、こっちはチョーブリブリになっちゃって、どうしようって感じなのに(笑)。それが最初ですね。
覚醒剤もやってたんですよね?
B:19歳から21歳くらいまでですね。で、3回目くらいにやったとき、めっちゃリリックが出てきて、なんか、ずっと書きたいと思ってたから、多分。
覚醒剤に手を出した理由はあったんですか?
B:そのとき、覚醒剤しかなかったからですかね。結局金ですよね。俺ウィード大好きだったんですけど、ないときは、そこにあるデパスとかを砕いてみたり。そんときは、たまたま覚醒剤があったから、やってみたら、あれはハマるやつでした。
なんでやめれたんですか?
B:やっぱり、イイ部分の効きって最初だけなんですよね。どんどん副作用っていうか、よくない部分が出てきて。本当に最初やりはじめたときは、めっちゃパーって元気になって「面倒臭いってなんだっけ?」ってなって、そんな感覚生まれてはじめてで、絶好調じゃんみたいな(笑)。イイこと10個、嫌なこと0個みたいな。けど最後の方は打った瞬間から、イイこと0個、嫌なこと10個になるようになって。ああもうこれは結構ヤバイなって。
嫌なことって、どんなことだったんですか?
B:勘ぐりですね。あとは全てですね。外にも出たくなくなったし、人としてヤバかった。親にも見せられない、みたいな超ブスな女ともやりまくってたし(笑)。
それは関係あるんですか(笑)?
B:関係あるんですよ(笑)。とりあえずやりたいけど、口説くのがダルいから、絶対に大丈夫なラインに手を出すみたいな。 で、そろそろ友達とかにも会えないくらいヤバイなって思って。そのとき、こいつ(DELTA 9 KID)が刑務所に行ってて、その時期、手紙とかも絶対書かなきゃいけないのに全く書いてなくて。すごい送ってくるんですけど、なんで返事が来ないんだろうみたいに思ってたと思いますよ。 だから、よくないっすよね。だから、やめましたね。
よくやめれましたね。みんなやめれないって言いますもんね。
B:でもやめようと思えばやめれますよ。多分。
リリックで地元の熊谷をディスってましたけど、逆に、ツアーとかライブとか行って面白いと思った街とかありました?
B:いや全部の街が面白いです。多分よその人が熊谷に来ても同じことを思わせる自信はあります。だから、そういう意味でいったら全ての街が魅力的でしたけど。てか熊谷クソって話でしたよね(笑)? 熊谷クソだよね?
G:ツアーとかで「戻りたくないな」って気持ちはありましたけど。熊谷に帰ってきて「何食う?」みたいな。九州とかいって魚とか食ってると、帰って来て何食べるかとか悩む。
B:田舎すぎて。新幹線が止まるってことくらいで。
G:川越とかの方が全然都会だし。
B:大宮でギリじゃない。人が住む場所としてはっていう感じですよ。熊谷の何が気にいらないんじゃなくて、何も気にいらない(笑)。
不便ってことですよね。
B:だし、やっぱ刺青とか入ってると、街も邪険にしてくるし。そういうふうに思われる場所にいたいとは思わないじゃないですか。だから別に好きじゃないですね。
ヤクザになる人も多いんですか?
B:そういう世界のことは知りませんけど、別に俺たちも、この街のヤクザの人にいじめられることもないし、むしろ売れてきたな、みたいな感じで可愛がってもらってます。俺らのことは、ガキのころから知ってる人たちだから、こんなところから、頑張って音楽を発信してること自体を、応援してくれてるんで。
では、東京に移ろうとは全く思わないですか?
B:いや、思わなくないです。だけど、やっぱりひとつだけ問題があって、今ここにマリファナがあるけど、俺たちは捕まっちゃいけないし、捕まらないために、みんなが動いてくれてるんすよ。それが東京だとできないじゃないですか。ウィード持ってきてってなっても「何時間かかんの?我慢できねえよ」ってなるし、「それ1日何回させんの?」って話になるじゃないですか。まず、警察の量も違うし、だから、そう考えると東京無理っすよね。
だったらアメリカに行くとかは、考えたことあるんですか?
B:アメリカに行きたいですけど、結局自分のやっているのは日本語での音楽なんで、それで、日本語で世界の楽曲と肩を並べて、張りあえるところにいきたいんです。それが、アメリカに行って英語で挑戦するってなってくると全然別の話になってくる。日本語でやるんだったら、日本の畑に自分がいないといけないって感覚的に思うんですよ。だから、合法でスパスパ吸ってたいですけど、それはもう歳とってからでもいいかな、みたいなふうに思います。
ちなみに、自分たちで社会を変えてやろう、みたいな気持ちってありますか?合法にしちゃえばいいや、みたいな。
B:俺たちが、どうこうじゃなくて、合法になると思いますよ。ならないとしたら、俺たちの力でもならないし。けど、なると思いますけどね。
ここまで、話を聞いてきて思うんですが、バタサイさんは、めちゃくちゃ頭の回転が早いし、いろんなこと、グルングルン考えているんですね。
B:確かに「誰もあんまり考えてないな」と思うことはあります。「ちゃんと働いてんのかな」って(笑)。でも思うよね? 2人もそうだし、多分俺の周りのヤツも、みんな考えてると思うんですけど。ただ、刑務所にいたときは、ぼうっとテレビを見てたんですよ。それが一番幸せだから。「俺がいいならよくね?」ってくらい投げやりっていうか、そんぐらいの気持ちになるんですよ。けど、シャバだったら、それは絶対ありえないです。例えば、お姉ちゃんと遊んでて、ここでダラっと、テレビ見てたりはありますよ。だけど、みんなでテレビに集中してとかは、絶対にありえないですね。
今どんなことを考えることが多いですか?
B:やっぱり、めちゃくちゃ誰もが認める良い曲をつくるってことですかね。今は、誰かにつくられたみたいな曲が、世界のチャートで1位をとってるけど、ああいう曲って全員が全員良いって言わないですよね。ジョン・レノンとか、ボブ・マーリーとか、ああいう人がつくった本当にチョー良い曲で、世界で1位になってるような曲は、誰が聞いても良い曲だって認めてしまうんだと思うんですよ。そういう曲がつくりたいです。洗脳じゃなくて、ちゃんと良い曲をつくって認められたい。っていうか俺たちが勝手に思ってることは、歴史に名前を残すことだけです。ただそれが「何言ってんのお前ら」っていうふうに思われるかもしれないけど、気持ち的にはそういう気持ちでやっています。それには多分良い曲をつくるしかないんで。
要するに、純粋に人の心を動かす曲をつくりたいってことですね。
B:そうです。ミュージシャンだったら、音楽でしかないと思ってて、てことは良い曲をつくるしかない。俺はリリックを毎日書いてますし、それを本当にやり続けるしかないし、つくり続けたいですね。
SPECIAL THANKS_Yurina Ishibashi