Facebookを使うたびにビンタされることにしたら人生変わった

起業家のマニーシュ・セティがSNS依存症から解放されるために選んだのは、〈痛烈な一撃〉だった。
Shamani Joshi
Mumbai, IN
Maneesh Sethi slap Facebook addiction
Photo courtesy of Maneesh Sethi

Facebookの悪事は、数多く指摘されてきた。たとえばQアノンのような過激派グループの温床になっていたり、デマを流したり、課題を先延ばしにするための便利な言い訳になったり。またこの世界最大のSNSは、多くの若者の退会により危機的状況に陥ってもいる。そんななか、Facebookから自由になるため、自らに〈痛烈な一撃〉を与えることにしたひとりの男がいる。

2012年、インド系米国人の起業家、マニーシュ・セティは、Facebookを覗きにいくたびに自分をビンタするための人員を雇った。それからおよそ10年が経った今でも、彼のパンチの効いた依存症克服計画は注目を集めている。

「RedditやFacebookで費やしていた時間は信じられないほど膨大で、そろそろやめないといけないと思っていたんです」とセティはVICEに語る。「RescueTime(時間管理アプリ)を使って、1日あたり19時間を無駄にしていることがわかったんです。そこで、僕はひとりで仕事をするのが苦手だと気づき、自分を無理矢理にでも仕事させてくれるひとが必要だと思いました。そこでCraigslistで、〈僕が仕事する手を止めたらビンタしてください〉というタイトルの広告を出しました。時給は8ドル(約900円)です」

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今年の11月中旬、世界一の大富豪であるイーロン・マスクがセティのこの話に反応したことで、彼は瞬く間に再びバズることとなった。

なぜ何年も前の彼の試みに今もなおひとびとが共感するのかというと、「この試みは前例がないし、多くのひとが抱えている問題の解決策を提示している。だから自然とバズる要素がある」とセティは説明する。「パンデミックのせいで、より多くのひとが孤独な在宅勤務に嫌気がさしていると考えると、今はなおさらそうだと思います」

COVID-19によるロックダウンやそれに伴う孤独感により、大人にも若者にもSNS依存症になるひとが急増した。だからこそ、セティのスラップスティック的な解決策が、多くのひとの興味をそそるのだ。「アンチも同じくらい湧きますよ。僕をクレイジーだと思うひともいれば、いいアイデアだと思うひともいる」

今や大勢のひとに支持されている彼のアイデアだが、もともとセティがこの方法を試してみようと思ったのは、少し違った理由だった。

当時セティが暮らしていたサンフランシスコでは、スラップ・ベットが爆発的に流行した。きっかけは、人気シットコム『ママと恋に落ちるまで』。敗者がきついビンタをお見舞いされるというギャンブルの一種だ。

セティが前述の求人広告を出すと、すぐに20件もの応募メールが届いた。最終的に、カーラという名前の女性がビンタ師として選ばれた。

「ビンタへの恐怖よりも、カーラが僕のルーティンに社会的な要素を加えてくれたことで、仕事に集中することができたんだと思います」とセティは語る。「仮ではありますがボスができて、新しい風が吹き込んだ。彼女はビンタ役としてだけではなく、リアルタイムでアイデアを交換できる相手としても助けになってくれました」

セティによると、このメソッドは非常に効果的で、彼の生産性は4倍になったとのこと。雇われビンタ師とは数ヶ月いっしょに働いたそうだが、その間何度ビンタされたかは覚えていないという。しかし仕事を軌道に戻すには充分だったし、タスクリストをこなすよりタイムラインをスクロールしたいという気分になるたびにビンタの痛みを思い出した、と彼は語る。

「あの経験からは、ビンタされるという恐怖よりも社会的要素が大切なのだということを学べました」と彼は強調する。「いっしょに働くチームメイトがいて、アイデアを出し合うことができること。それが集中力を高め、居心地の良い場所から抜け出すために理想的なんです」

この経験から、セティは〈パブロク〉という習慣トレーニング用のウェアラブルデバイスを開発した。ユーザーが良い行動をとったときは振動して報酬を与えるが、ToDoリストにある項目を後回しにするなど、悪い行動をとったときは軽い電気ショックを与える。現在、セティの会社ではタスクリストを作れるアプリを提供しており、ユーザーはそれをダウンロードし、自身のウェアラブルデバイスとペアリングできる。

またセティは、この経験により、仕事を他のひとに任せること、そしてチームとして効率的に働くことの重要性も知ったと主張する。

彼にとってこの実験は、自分の力を発揮するために必要な〈痛手〉だったわけだ。

「自分でコントロールして、SNSに時間を浪費するのをやめ、自分にとって必要なものに時間をかけることに決めたんです」とセティ。「今は、当時自分が夢見ていたことを、他のひとたちが実現できるよう手助けしたいですね」

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