普段の生活では気づきようがないが、私たちは十数個の星の最期の爆発によって宇宙に出現した、巨大な〈スーパーバブル〉に包まれている。局所バブル(Local Bubble)と呼ばれるこの泡は、太陽系を中心に直径約1000光年ほどの大きさで広がっていて、銀河系で超新星爆発によって形成された無数のバブルのうちのひとつだ。
宇宙のスーパーバブルは何十年も謎に包まれていたが、近年の天文学の発展によって、その進化と構造に関する重要な情報が明らかになってきた。ここ数年で、研究者は局所バブルの形状の3Dマップ化に成功し、さらにバブルが宇宙空間で広がりながらガスや塵を取り込むために、その表面で無数の星が盛んに誕生していることを証明した。
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今回、科学者チームは、星の形成に重要な役割を果たすとされるバブルの磁場を図面化することで、局所バブルの進化の過程へと、さらにもう一歩踏み込んだ。
ハーバード・スミソニアン天体物理学センター(Harvard-Smithsonian Center for Astrophysics: CfA)の夏期研究プログラム中に、この新たな研究に取り組んだテオ・オニール(Theo O’Neill)率いる天文学者のチームは、今年1月11日、ワシントン州シアトルで開催された米国天文学会第241回会合で、「スーパーバブル上の磁場の史上初の3Dマップ」を発表した。同チームはマップの詳細な視覚イメージを明らかにし、局所バブルの姿をより鮮明に描き出した。
「大質量星は星と星の間に何らかの形でエネルギーを放出しますが、宇宙空間には、主にその大質量星のさまざまな形態のフィードバックによって生まれるバブルが多数存在します」と最近ヴァージニア大学で天体物理学と統計学の学士号を取得したばかりのオニールは、メンターのアリッサ・グッドマン教授と、前述の研究論文の共同執筆者であるCfAの天文学者とともに、ビデオ通話で説明した。
グッドマン教授は、太陽系の外の磁場は内部の磁場よりも3Dマップ化するのが困難なため、3Dモデルで詳細を明らかにするのが非常に難しい、と付け加えた。そのため、今回新たに作成されたマップはたたき台として捉え、未来の観測や研究手段によって改良を重ねることが望ましいという。
「テオは、局所バブルの表面の磁場の3Dマップを見事に推測しました」とグッドマン教授は説明する。「だからこそ私たちは大いに期待しています。太陽系の外の様子を3Dで予想したのはこれが初めてですから」
オニールと同僚たちは、欧州宇宙機関の2つのミッションの観測データの助けを借りて、この前例のないマップを完成させた。そのミッションとは、現在天の川銀河の最も詳細な地図を作成中のガイア計画と、2013年に終了するまで宇宙最古の光を観測していたプランク計画だ。
どちらのミッションも、この銀河系の塵の分布を詳細に観測していた。オニールのチームはこのデータセットを活用し、局所バブルの捉えづらい構造や仕組みを調査した。塵粒子が磁場の中に引き込まれてしまうため、研究者たちは、バブルに内在する磁力の規模や方向を把握する手がかりとなる可能性のある、光の当たる塵の特定のパターンを探った。
二次元的な磁場の観測結果を三次元でマップ化するため、研究者たちは観測された塵のほとんどが、磁気活動と同様に、広がり続けるバブルの表面にあると仮定した。これらの仮定は学説と一致するものの、グッドマン教授は、未来の観測によってチームが作成した簡素なマップはさらに複雑になるだろうと指摘する。
「これは史上初の試みであり、最も正確だと思われるものです」とグッドマン教授は語る。
この点に関して、チームはこの新しいマップが他の科学者たちにとって、天の川に散在するスーパーバブルをより深く理解するための土台になることを願っている。太陽はほんの数百万年前に局所バブルの中に入ったばかりで、さらに数百万年後には銀河系へと移動し、その後も他のバブルからバブルへと漂い続けるだろう。
「このマップが完成したことで、私たちが行えるようになった実験はたくさんありますが、他の人びとにも実験してもらえることを願っています」とオニールは語る。「星は密集して存在しているので、何も太陽系が特別というわけではなく、私たちが局所バブルの中にいることがラッキーなんです。宇宙空間にはこのようなバブルが無数に存在することがわかっていて、実際、この局所バブルのすぐ近くにもたくさんあります」
「次の理想のステップは、局所バブルが他のフィードバック・バブルと隣接する場所を調べることです」と彼らは結論づけた。「これらのバブルが互いに影響し合うと何が起こるのでしょう? それがどのように星の形成、ひいては銀河構造全体の長期的な進化を促すのでしょうか」