ロシアでのビジネスを続けるOnlyFansに、ウクライナ人セックスワーカーが抗議の退会

「ロシア人はお金や快適さで代償を払う。ウクライナ人は命で払う」
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translated by Ai Nakayama
Tokyo, JP
A content creator sits in front of a ring light.
写真:イゴール・アレクサンダー / リングライトの前に座るコンテンツクリエイター

ロシア国民に対して〈鉄のカーテン〉を下ろしていない西側社会のデジタルプラットフォームは数少ないが、そのなかのひとつがOnlyFansだ。OnlyFansとは、アダルトコンテンツを扱う、サブスクリプション型のコンテンツ共有プラットフォームである。ウクライナのセックスワーカーたちは同社の方針に反発し、同サービスから離れはじめている。

3月には、OnlyFansに登録しているウクライナ人クリエイター数十人が同サービスに登録しているロシア人クリエイターを排除するよう同社の上層部に求めるメッセージを送った。VICEが確認したメールによると、ロシアで継続中の同社の活動について説明してほしい、と要求するひともいれば、ロシアから撤退しない同サービスへの抗議として自らのアカウントを消したひともいた。

そのなかのひとりが、カムモデルとして〈Lil_Monki〉という名前で活動するユーザーだ。Lil_MonkiはVICEの取材に対し、OnlyFansをはじめとするグローバルブランドがロシアから撤退しない限り、ウクライナ人は殺人や戦争犯罪の被害者でありつづける、と語った

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「ロシア国民全員がプーチンを支持しているわけではないし、彼の行動の責任を負うわけではないからフェアじゃない、と言うひともいるけれど、それは私の国のひとびとだって同じです」とLil_Monki。「厳しい制裁は、ウクライナで殺された女性や子どもたちに対してロシア人が払うことのできる代償としてはあまりに小さいと思います」

「ロシア人はお金や快適さで代償を払う。ウクライナ人は命で払っているんです」

3月初頭から、主要プラットフォームはロシアのウラジーミル・プーチン大統領によりブロックされたり、自発的にロシアから撤退している。2月末にFacebookがアクセス制限され、その直後にTwitter、YouTubeが同様の措置を受けた。

大手プラットフォームのロシアからの追放は、ウクライナ侵攻にまつわる〈声〉をプーチンがコントロールしようとしたことが主な原因とされる。プーチンの意のままにされることを避けるために、自発的に撤退した企業もある。

そのうちのひとつがTikTokだ。同社は3月6日に、ロシアからのライブストリーミングと新規コンテンツの配信を停止。Netflixもそれに続いた。またApple、サムスン、Microsoft、オラクル、シスコなど巨大テック企業やその他の企業は、自社サービスを大幅に制限、または完全撤退を行なっている。「Minecraft」をはじめとして、プレイができなくなったゲームもいくつかある。

しかしOnlyFansは現在もサービスの提供を続けている。

3月のある日、OnlyFansで拠点をロシアとしていたロシア人モデルたちのプロフィールが24時間の間に「真っ暗」になり、のちに非アクティブと表示される、ということがあり、制裁の影響だと考えるクリエイターたちもいた。 

OnlyFans(ちなみに同社の支配株主はウクライナ系米国人とされる)の広報担当者は3月当時のVICEの取材に、同社はロシア人クリエイターたちを支持しており、彼らには「これらの非道な行い」の責任はないと理解している、と答えている。

「経済的な制限のあと、当社はすべての国のクリエイターのアカウント活動を回復することができました。当社が彼らを支援するための支払い方法をもちつづける限り、彼らのアカウントは全機能を利用可能です」

「当社は、クリエイターの拠点に基づいたアカウントの削除、停止は行なっていません。コミュニティをサポートするためにできることはすべて行なっています」

それ以降、ロシアのクリエイターたちはTwitterで、自分たちのアカウントは無効化されたままだと主張。また、OnlyFansが警告なしにアカウントを無効化したことで、まだ支払われていない収益を回収することもできないと訴えている。

OnlyFansのとあるロシア人ユーザーはVICEに対し、自分のアカウントにはアクセスでき、コンテンツも投稿できるので収益は得られるものの、そのお金を引き出す方法がない、と明らかにした。経済制裁の結果、支払い方法も大きく制限を受けているのだ。

東欧諸国にはロシア語話者の統一されたコミュニティが広がっており、これはTelegramのグループチャットで、ロシア人同業者たちと対等な立場で長らく交流してきたウクライナ人セックスワーカーにとって、道徳的なジレンマを感じざるを得ない事態だ。

自分たちの故郷の町に容赦なくミサイルが降り注いでいる今、ウクライナのセックスワーカーたちはロシアの仲間たちに対する感情を割り切るのに苦労している。彼らにはプーチンの侵略の責任はないが、より強力な経済制裁を免れるのも違う、という気持ちだ。

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ウクライナの南東部に暮らす家族のそばにいるために最近ドイツから帰国し、再び国外へ避難した26歳のウクライナ人セックスワーカーのカーラ・ザイエンは、OnlyFansは「最低限のこと」すらやっていない、とVICEに語った。「中途半端」なことをしても意味がない、と彼女は言う。

「そうじゃないと、この戦争が永久に終わらないんじゃないかと不安です」とザイエン。「私たちにとっては、それがいちばん恐ろしいこと。なぜなら、そのままドネツクやルガンスクのようになりかねないからです。最初はみんなが注視し、みんなが心配する。でも数ヶ月経ったら、『もう知ってる、日常生活に戻ろう』となってしまう」

「私は直接的にロシアのひとびとに敵意を抱いているわけではないし、ロシア人を憎いとは思っていません」とザイエン。「だけど国民全体としては、グローバル市場で稼ぐための可能性からは締め出されるべきだと思います」

ロシアで現在も行われているビジネス活動についてOnlyFansにコメントを求めたが、当記事の公開までに回答はなかった。

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