科学者たちは当惑し、同時に危機感を抱いた。英国のスタンフォード、エモリー大学とイタリアの複数の大学による研究チームが、勃起時のペニスの長さの平均が「全世界で」12センチから15センチに増加したことを示す論文を発表したのだ。
本研究は1942〜2021年の間に公表され、計5万5761人の勃起時の陰茎の長さを測定した75の論文を対象にしている。チームは実験参加者の自己申告ではなく、科学者が測定した研究のみを参考にし、骨盤手術後に測定を行なった研究は除外した。スタンフォード大学の論文によれば、「1992年から2021年にかけての勃起時の陰茎長平均の増加」は「複数の地域と被験者集団」で確認されたという。
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科学者は勃起時の陰茎が伸長した理由は明らかになっていないというが、いくつか仮説を立てている。そのひとつは地球環境的な要因で、これは現代の少年(と少女)が過去の世代よりもずっと早く思春期を経験することに関連しているかもしれないという。特筆すべきは、〈デスクワーク中心の生活様式〉が、陰茎の長さを伸ばすホルモンの変化を引き起こしている可能性が指摘されたことだ。
「これらの変化は、思春期到来の時期が若年化しているという所見と関連づけられるかもしれない」と研究チームは述べる。「研究者たちは、デスクワーク中心の生活様式、肥満、もしくはホルモン破壊物質への曝露の増加が関係しているかもしれないと仮説を立てている」
それに加え、チームは、同じく不明点は多いが地球環境の変化によって引き起こされた可能性のある現象として、精子数やテストステロンの世界的な減少と、精巣腫瘍の増加を指摘している。
医学雑誌『Stanford Medicine』は、この論文の著者のひとりで、平均値の増加はチームにとって想定外だったと語るマイケル・アイゼンバーグにインタビューを行なった。「男性のリプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)に関する他の測定で確認された傾向を踏まえ、私たちはむしろ、同じく環境曝露による陰茎長の減少を予測していました」と彼は語る。「この増加は、比較的短い期間で起きたものです。発達過程における全体的な変化は、たとえどんなものでも憂慮すべきです。なぜなら私たちの性と生殖に関するシステムは、人間生物学において非常に重要な要素のひとつだからです。これほど迅速な変化が確認されたということは、何かが私たちの体に大きな影響を及ぼしているということです。これらの研究結果を裏付けたうえで、変化の原因を突き止めなければなりません」
アイゼンバーグは「農薬や衛生用品などによる化学物質への曝露」が男性のホルモン値を変えているのかもしれないと推測する。
なお、この研究については留意するべき点がいくつかある。本論文は厳密なメタアナリシスである一方で、世界の男性数十億人のうちわずか5万5000人しか対象にしていない。さらに、研究チームは、陰茎の測定は温度や体型などの影響を受ける可能性があると指摘している。志願者バイアスの可能性も考えられるが、研究チームはそれが今回の結果を導き出すほど長期的に一貫して存在するとは考えにくいとしている。
「性器の泌尿機能や生殖機能が進化したかもしれないという重要な示唆を前提とし、後続研究でこの傾向を裏付け、因果関係を明らかにする必要がある」とチームは述べている。