わたしには3年ほど、幻覚剤を頻繁に使っていた時期があった。アヤワスカ、イボガ、マジックマッシュルームなどさまざまな薬物を使い、幸運にもすべてに効果を感じられた。しかし、幻覚剤を使い始めて3年が過ぎた頃、トリップ体験によって感情的な疲労を感じることが増え、疲労困憊して回復に時間がかかるようになった。後でわかったことだが、このような体験をしているのは、わたしだけではなかった。「なかには、度重なる幻覚剤の使用によって脳内の重要なノード(※訳注:ネットワークを構成する中継点や分岐点)やネットワークの機能が変わり、過去に体験したものとは異なる、変則的なトリップ体験が誘発される場合があります」と説明するのは、ジョージタウン大学メディカルセンターの神経学・生化学教授ジェームス・ジョルダーノ(James Giordano)だ。「もしそれが定期的に起こるとしたら、平易な言葉で説明すれば、それは脳のノードとネットワークの機能を落ち着かせ、元の正常な状態に戻すために、〈しばらく幻覚剤の使用は控えるように〉という体──そして脳──からのシグナルかもしれません」
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そういう訳で、わたしは2年前に幻覚剤を含むあらゆる薬物の使用を一旦中止することにした。それ以降、薬に頼らずに意識の状態を変えたり、高めたりするクリエイティブな方法をいくつか発見した。わたしが実際に試してドラッグを使わずにハイになれた方法を、効果や仕組みとともに紹介する。多くのひとにとって、カカオは単なるチョコレートの原料だろう。しかし、カカオはオルメカ、マヤ、アステカ文明の時代まで遡るスピリチュアルな儀式の必需品だった。その子孫たち──そして他にもさまざまな文化をバックグラウンドに持つひとびと──は、今でも意識を高めるためにカカオを使用している。ドラッグを断った2年間で、わたしはロサンゼルスで開催されたカカオ・セレモニーに何度か参加したり、ネットで購入したペーストや粉末を使ってカカオドリンクを自作してきた(個人的なオススメはKeith’s Cacao、Ora Cacao、Zeal Superfoodsのオーガニックカカオパウダーだ)。カカオは気分を高揚させ、活性化し、時には心を開かせる効果もあった。あるセレモニーでは涙があふれ、別の時には聖書と深く向き合った。どの儀式でも他人に対してオープンになり、新しい友人ができた。朝にカカオを飲むと、一日中幸福感が増し、いろんなアイデアが浮かんできた。ハペは2本のチューブのついた器具を使い、片方のパイプから自分で、もしくは誰かに息を吹き込んでもらい、もう片方のチューブを通して鼻から吸い込むタイプの嗅ぎタバコだ。南米の原始文明時代からの長い伝統があり、精神を活性化させ、体との結びつきを強くする効果があると信じられている。今までに試したなかで、ハペは幻覚剤に一番近い効果を得られた。落ち着き、臨場感、集中力、ポジティブな感情を高め、すべてうまくいくという気持ちになれる。強烈な効果の持続時間はわずか数分間だが、時には何時間も続くこともある。ある晩、リストラティブヨガのクラスの前にハペを吸ったら、いかに自分を愛するべきかに気づかされ、クラスの間じゅう号泣し続けた。別の夜には友人と一緒に吸い、セックスとスピリチュアリティについてトリッピーな会話を楽しんだ。「ハペは精神活性作用のある化学物質です。そのような化学物質はいずれも認知、感覚、知覚に影響を与え、意識を高揚させる可能性があります」とジョルダーノ教授。カカオと同様、ハペにも幻覚作用はないが、エネルギーの増加やリラックス効果、頭がクリアになるなど、幻覚体験と似た作用をもたらす。これらの効果はハペに含まれるニコチンに由来するもので、諸刃の剣でもある。従来のタバコのように中毒性はないものの、大量に使用すると癖になる可能性がある、と教授は指摘する。そのため、日常的ではなくたまに使うだけに留めておいたほうがいいだろう。
カカオ
カカオにはフェネチルアミンという化合物が含まれ、覚醒作用をもたらすと同時にドーパミンの放出を促す効果もあり、それが「親しみやすさ、思いやり、絆、一体感、集団への所属意識」などにつながる、とジョルダーノ教授は説明する。「幻覚剤に関する60年代の文献には、幻覚剤の本質は愛と平和の絆を生み出すことだと書かれています」つまり、幻覚などは誘発しないものの、カカオは幻覚剤のように快楽や一体感を高める効果がある。しかもリスクはほとんどない。ただしカカオにはカフェインが含まれるので、夜の使用は控えている。「幻覚剤に関する60年代の文献には、幻覚剤の本質は愛と平和の絆を生み出すことだと書かれています」──ジェームス・ジョルダーノ
ハペ
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ブレスワーク
子宮頸部オーガズム
いろいろな種類の風呂
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別の時は、マイクロドージング効果のあるアヤワスカをバスタブに一滴垂らしてみた。やはりこの時もアヤワスカの精霊が体に入ってきたような気がした。浴槽を出るとげっぷが出た。これはアヤワスカを実際に摂取し、友人との食事中の会話でいろんなアイデアが自分の中に流れ込んでくるのを感じたときにも体験した、一種の〈浄化〉だ。大量に入れなければ、浴槽のお湯からアヤワスカが体内に取り込まれる可能性は低い、とジョルダーノ教授は語る。ここで考えられるのは、これらの体験の両方で、アヤワスカ儀式で活性化していたわたしの脳の一部が、儀式の音楽とアヤワスカの存在によって再び活性化したということだ。これはパブロフの犬の状態と似ている、と教授は説明する。「薬物と音楽を組み合わせた場合、薬物由来の幻覚作用に対する反応は、音楽によっても引き起こされる場合があります。その体験のことを思い浮かべるだけで、認知的もしくは知覚的なリバウンド効果が生まれます」。水風呂も一役買っていたかもしれない、と教授は指摘する。「水風呂によって内因性オピオイドが体内で放出されるひともいます。それが気分の高揚につながったのでしょう」いかにもニューエイジ的だが、アヤワスカやDMT、その他の物質の周波数を放出するという〈Qi Coil〉と呼ばれる機械がある。このテクノロジーの存在を教えてくれたのは霊能者のジャスティン・ケイ(Jusstine Kaye)で、親切にも彼女のQi Coilを使わせてくれた。マシンの見た目はiPadに似ていて、好きな周波数を選び、ストーンに接続してそれを握ることで、周波をキャッチする仕組みだ。ハリウッドのおしゃれなクラブの屋上で、わたしはアヤワスカの設定を選び、マシンをぎゅっと握りしめた。すぐに多幸感がわたしを包み込んだ。アヤワスカというより、MDMAを使ったときの感覚に近い。隣に座っていたケイは、ストーンには触れていなかったものの、近くにいるだけで同じ効果を得られたと言っていた。自分の人生をもっと客観的に、自我に邪魔されることなく俯瞰できるような気がした。このマインドとケイの直感力の助けを借りて、わたしたちは自分が人生で起こすべきさまざまな変化について話し合った。その夜じゅうずっと、そしてUberでの帰り道も、新たなアイデアが頭の中で絶えず生まれ続けた。ジョルダーノ教授は複数のひとから高周波マシンによる幻覚状態について話を聞いたことがあるものの、この技術に関する専門的な研究については聞いたことがないという。マシンの開発者デヴィッド・ワン(David Wong)氏によれば、このマシンは「サウンドセラピーと磁波を組み合わせて脳の神経経路を刺激することで幻覚状態を模倣する」という。これらの音と磁波は「脳の幻覚体験に関連する部位を活性化させる」そうだ。それがわたしが体験したことなのかはわからないが、確かに何かを感じた。わたしは今でもいつか幻覚剤の使用を再開し、それがもたらす精神的・身体的メリットを享受したいと考えている。しかし同時に、幻覚作用のない手段でも、治癒や実験の余地が大いにあることも理解している。ブレスワーク、ハペ、Qi Coliマシンの効果は、幻覚剤を使用した儀式にも匹敵する。どんな幻覚体験にもリスクはつきものなので、これらの比較的安全な選択肢は幻覚剤に代わるものとして、幻覚剤の使用を再開してもしなくても有効活用していくつもりだ。