人間のペニスが縮小している原因は環境汚染だった

地球をめちゃくちゃにすることが、女性の妊娠率、男性の精子数、ペニスサイズにも悪影響を及ぼしている。
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translated by Ai Nakayama
Tokyo, JP
a zuccini, banana, eggplant, chilli, and a baby carrot lying against a yell
Photo by Deon Black via Pexels

私たち人間が地球をめちゃくちゃにしてきたことは、誰しもが知っている。人間の多数の活動の結果として生じた環境汚染は、人間の生活だけでなく同じ地球に棲む他の生物の暮らしにも多大なる影響を及ぼしている。ホッキョクグマカワウソのペニスがダメージを受けていることはこれまでも報じられてきたが、ご存じのとおり生命は循環する。そう、人間の生殖機能にも変化が現れているのだ。

著名な環境・生殖疫学者、シャンナ・H・スワン(Shanna H. Swan)博士の今年2月に発売された新刊が話題となっている。本書は、日用品に使用されている工業用化学品と、ペニスサイズの縮小、精子数の減少、勃起不全(ED)に因果関係があることを明らかにしている。『Count Down: How Our Modern World Is Threatening Sperm Counts, Altering Male and Female Reproductive Development, and Imperiling the Future of the Human Race(カウントダウン:現代世界がいかに精子数を減少させ、男女の生殖機能の発達を変化させ、人類の未来を危険にさらしているか)』という長い書名そのものが警鐘のように響く。もはや見て見ぬ振りはできない。

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2017年、スワン博士は共著者としてある論文を発表した。1973年から2011年にかけて、西洋で精子の数が59%減少したという研究だ。新刊では、少ない精子数、低い出生率、縮小するペニスサイズなど生殖に関する問題と化学物質の因果関係について掘り下げている。「現代世界の環境や、不健康なライフスタイルの中に存在する化学物質は、人間のホルモンバランスを崩し、生殖機能の様々な乱れにつながっている」と博士は本書の中で指摘する。また博士は、出生率に関する新たな事実についても記している。「世界のいくつかの場所では、その土地の平均的な20代女性の出生率が、彼女たちの祖母世代の35歳当時の出生率に比べて低い」。また、男性の精子数は彼らの祖父世代に比べて半減しているだろうとも書いている。

さらに博士の最新の研究では、汚染物質や化学物質が精子の質を下げ、さらにペニスのサイズや精巣の大きさを縮小させることが判明している。博士はこれを「世界的な実存の危機」と呼び、これが人類の生存すらも脅かす可能性がある、と警告する。「生殖の問題がこのまま続くようであれば、近いうちに人類は絶滅の危機に瀕するだろう」と博士は記す。「ある種が絶滅危機に瀕していると判断するための5つの指標があり、5つのうち1つにでも当てはまれば危険だということだが、現在の人類は少なくとも3つに当てはまる」

また、博士の研究では、妊娠3ヶ月頃に子宮内でフタル酸エステル(一般的なプラスチックやおもちゃなどに含まれる化学物質)に曝露すると、肛門性器間距離(AGD)が狭まることがわかっている。「AGDとは、肛門と性器の付け根の距離のことです。昔から科学的に重要だと考えられています。1912年に発表されたAGDについての論文では、女性のAGDよりも男性のAGDの方がおよそ100%長いと記されています。私たちの研究では、フタル酸ジエチルヘキシルを含む化学物質が、男性のAGDを短くすることが判明しました」と博士は〈The Intercept〉のインタビューで語っている。

環境保護活動家のエリン・ブロコビッチ(Erin Brockovich)は、『The Guardian』のコラムで本書について言及。「永遠の化学物質」への曝露について、そしてそれらの化学物質が電化製品、プラスチック、食品包装、掃除用品など日用品によく使用されている事実について指摘した。「PFAS(パーフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物)と呼ばれる化学物質は〈永遠の化学物質(フォーエヴァー・ケミカル)〉と呼ばれる。なぜならそれらは環境や人体の中で分解されないからだ。ただひたすらに蓄積していき、一分一秒ごとに、あるいは1時間ごとに、1日ごとに、より大きなダメージを与える。今や人類は、ギリギリまで追い詰められている状態だ」

悪いニュースはまだある。化学物質、汚染物質は、私たちの性欲にも影響する。「女性の体内のフタル酸エステルの濃度と、性的な満足感とに相関関係があることがわかっています」とスワン博士は前述のインタビューで語った。「また、中国の研究者によると、ビスフェノールA(BPA)の血中濃度が高い労働者は、性欲減退などを含む性的問題を抱える割合が比較的多いそうです」

スワン博士の研究によると、性欲減退、出生率低下の主な原因は、BPA、フタル酸エステル、パラベン、アトラジンだ。これらの化学物質はプラスチックや除草剤、歯磨き粉、化粧品などによく含まれており、内分泌かく乱物質として作用する。その結果、早産、IQ低下、肥満、そしてスワン博士の研究で判明したように、ペニスサイズの縮小が引き起こされる。しかし、これらの化学物質を避けるのは困難かもしれない。というのも、これらは成分表示に記載されていないことが多いし、先ほども述べたとおり、あまりに多くのものに使われている。プラスチックや化粧品だけではない。シャンプー、クッション、缶詰食品、さらにATMの利用明細などにも含まれているのだ。

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2018年にメルボルンの科学者たちにより発表された研究では、プラスチックに含有される化学物質が、乳幼児の男子の性器欠陥につながっていると判明した。さらに今年、フランス公衆衛生局の研究者たちが、かつて炭鉱だった地域など、汚染された地域に暮らす男児は、2つの精巣のうち、どちらか一方が停留精巣の割合が2倍、どちらも停留精巣の割合が5倍となっていることを明らかにした。

スワン博士は、出生率の低下と毒性のある化学物質は、これからの世代に悪影響を及ぼす可能性があると主張する。「男児を妊娠中、自分が化学物質に曝露してしまったら、それが胎盤を通して赤ん坊に届いてしまうかもしれない。つまり彼の子供の元になる生殖細胞が、すでに影響を受けるということです。さらに、彼は大人になってからも再び化学物質に曝露する。複数回曝露するということです」と彼女は前述のインタビューで説明する。「だからこそ、人間の出生率と精子の質が継続的に低下しているのです。もし両親や祖父母の曝露がなければ、ゼロからやり直すことになる。もちろん(自分が曝露しているので)低下はしますが、低下率はずっと横ばいなはず。でも過去の世代からの問題を引きずっているので、そもそもスタートの時点で低下が決まっているのです。しかも、曝露が何度も繰り返される」

では、未来の世代のペニスがどんどん小さくなっていくことは避けられないのだろうか。それとも、私たちに今できることはあるのだろうか。スワン博士は、オーガニック製品を買うこと、そして普段からプラスチックの使用を減らすことで、生活の中での化学物質への曝露は減らせるだろう、と語る。また博士は、外食よりも自炊を推奨する。レストランの従業員が使用する食品のパッケージや手袋から、食品内にフタル酸エステルが混入し、それが食べた人の体内に入り込むからだ。

「環境のため」では重い腰を上げられなかった人も、自分のペニスのため、そして人類の文明のために、今こそ環境汚染と闘うべきだ。博士もこう書いている。「私たちはできることをしなければならない。自らの生殖機能のため、人類の運命のため、地球のために」

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