「だまされた」⸺ホホジロザメを調理して食べたインフルエンサーが謝罪

ネットで購入した「食用の」サメが実は保護種であったことが判明し、フードブロガーは窮地に陥った。
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translated by Ai Nakayama
Tokyo, JP
​Tizi was fined $18,500 for eating a protected shark.
堤子(Tizi)は保護種のサメを食べたとして、12万5000元(日本円で約240万円)の罰金を科された。PHOTOS: XIAOTIELEME ON KUAISHOU

エイ、ダチョウ、ワニ……。四川省の南西部を拠点として活動し、文字どおりなんでも食べる中国のフードブロガー、堤子(ティジ)、通称ジン。彼女は変わった食材を自ら調理し食べる動画で700万人以上のフォロワーを集めた。このニッチなジャンルは、近年中国のSNSにおいて人気が高まっている。

しかし彼女は昨年、禁忌に手を出してしまった。彼女が購入して食べた「食用の」サメが、実は中国の野生動物保護法において保護の対象となっている種であったことが明らかになったのだ。当局は捜査の結果、今年1月にジンに12万5000元(日本円で約240万円)の罰金を科した。そして禁じられたサメを食べてから7か月、ジンがついにインターネットに戻り、謝罪を行なった。

今年2月に中国の動画共有プラットフォームである快手(クアイショウ)と抖音(ドウイン)で公開された投稿で、ジンはインターネットで海産物を扱う売人に、このサメは保護種ではない、毎日大量に売っている、と言われてだまされた、と語っている。彼女は以前もその売人と取引したことがあったため信用してしまったという。

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「食べても違法にならないサメもいるので、撮影のときにはこのサメもそうだと思い込んでいました」とジン。「完全にだまされていたんです」

中国では絶滅危惧種や保護種を除くサメの販売や消費は法律で認められている。同国では今でもフカヒレスープが伝統的な珍味だ。近年ではその需要は激減しているものの依然として〈食欲〉は根強く、絶滅危惧種のヒレを合法のものだと偽る違法取引は後を絶たない。

昨年7月に投稿された4分の動画で、ジンは中国のショッピングサイト、淘宝(タオバオ)を通し、人間と同じくらいの大きさのサメを7700中国元(日本円で約14万円)で購入。家族や近所のひとたちに協力してもらいながら2つに切断し、それぞれ調理した。片方は唐辛子とビールで煮込み、もう片方はマリネして直火で焼いた。彼女は動画の最後で、そのおいしさを絶賛している。

動画はすぐにバズり、批判にさらされた。目利きのSNSユーザーたちは、このサメが中国において第2級の保護種であると特定し、当局に捜査をするよう訴えた。その結果、サメを捕らえて販売した2人も拘束された。

その後、種を同定する技術であるDNAバーコーディングで彼女の食べ残したサメを解析したところ、保護種であることが確認された。この事件は四川省南充市市場監督管理総局に引き継がれ、最終的にジンは今年1月下旬、12万5000元という多額の罰金を科された。人気を博していた彼女の快手と抖音のアカウントもしばらく凍結された。

復活した彼女の投稿では、本件について彼女を起訴することはないという内容の南充市公安局の書類も公開されていた。これについて当局は、地元メディアHongxing Newsに対して内容を認めている。

しかし多くの中国人SNSユーザーは、この処分は寛大すぎると考えている。微博(ウェイボー)におけるジンの謝罪に対する投稿のトップには「抑止力が不十分だと、真似をする人が後を絶たないだろう」というコメントが見られる。2021年には別の中国人フードブロガーが、同じく中国で保護種として分類されているホラ貝を蒸し焼きにして食べた容疑で拘束されている。

新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより人獣共通感染症の拡大が懸念されたことで、中国は2020年に野生動物の取引と消費を禁止した。しかしこの法律が適用されるのは陸生動物のみだ。

ジンは投稿の中で、みんなに謝らなきゃいけない、と述べている。活動休止期間は頻繁に図書館や水族館に足を運び、海の生き物たちについて学んでいたそうだ。

「自分の至らなさを挽回していきたいです。動画配信者として正しい情報を広めるべきだから」とジンは語る。成都市の水族館で撮影した動画では、ウミガメやペンギン、カラチョウザメなど、保護の対象となっているさまざまな海洋生物を紹介している。

「自分自身の過ちを反省し、これからも海の生物についての知識を深めていきます」と彼女は述べた。

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