なぜ男性はやたらと股間を触るのか?専門家が解説

「性的な意味はない」らしい。だったらなぜ?
A man scratching his groin
Photo: txking / GETTY IMAGES

片手をパンツに突っ込みながら気取って歩く男性の姿は、誰でも目にしたことがあるだろう。Redditで言われていることが本当なら、男性は1日に23〜30回ペニスを触るという。10代や成人男性のこのような行為については、いくつか説がある。男性性の強化、ワックス脱毛後の炎症、タイトすぎるパンツ、さらに役目を果たしたいという社会的概念とも指摘されている。しかし、なぜ片手を股間に突っ込んで歩くのが〈男性的〉なのか? そしてなぜ、そうしている間は恥の概念が完全に消え失せるのだろうか?

「どこかに所属することは、ウェルビーイング(幸福でいること)において非常に重要といえます。男性たちはこの行為を示すことで、特定の集団への帰属意識を覚えるのでしょう」とアイルランド、ダブリンの統合的心理療法士ジョー・ライダー(Jo Ryder)は説明する。「ペニスは男性性の強力なシンボルであり、すべての男性がその場所がきちんと機能することを願っています。それがこの行為の意図です。私を訪ねてくる人びとは、みんな不安でいっぱいです。ペニスに手を置くことは自尊心に満ちた行為であり、そのひとの男性性への自信を表しています。」

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科学的根拠に基づくと、低強度の身体的接触は脳内でオキシトシンを分泌するとアイルランド国立大学ゴールウェイ校博士研究員のアンドラス・コルトは指摘する。オキシトシンは社会的つながりをつかさどり、情緒をコンロールする神経ペプチドだ、「オキシトシンは私たちの健康やウェルビーイングに、さまざまな有益な効果をもたらします。」と彼は説明する。「例えば、不安を軽減します。」

ご存知の通り、オキシトシンは性的な接触でもそれ以外でも、愛するひとに触れられると分泌される。しかし、そこには自分で自分に触れることも含まれるのだろうか。それこそがまさに30代のジョー(Joe)──今回VICEが話を聞いた全員と同じく、股間に触れることについて率直に打ち明けられるように匿名で取材に応じた──が語ったことだ。「公の場では絶対にやりません。やる男性は多いですけどね。僕は違います。」と彼はインスタグラムのDMで語った。「ニュースや映画を観ているときに無意識にやっています。性的な意味はまったくありません。安心毛布のようなものです。」

ジョーの説明は当たらずとも遠からずだとコルトはいう。「もちろん、性器に関することなので、当然性的な含みはあるはずです。ですがこの行為の目的は、意識レベルでは、性的な刺激とは関係ありません。むしろ、自分の〈お宝〉が盗まれていないことを素早く確認するためか、もしくは単にかゆみがあるだけでしょう。」

ライダーによれば、自身の男性性と関わりを持つためというのが別の説だ。この行為には〈部族的な面〉があり、〈一部の集団だけがすること〉だという。

「心理学者たちはこれを自己鎮静行動として認識しています。」とコルトは説明する。「統計があるかは定かではありませんが、多くの男性が陰部に触れたりもてあそんだりしていると思います。大多数のひとはひとりのときか、冷やかな目で見られないように男性だけのグループにいるときしかしませんが。」

ジョーも自己鎮静行動という意見に同意する。爪を噛んだり、親指を吸ったり、タバコを吸ったりするのと同じで、半ば意識的で半ば無意識な行為だという。「外でやりたいと思ったことはありません。厄介なことになるかもしれないので。」

しかし、これが自分では止められないとしたらどうなるのだろう。「公の場でマスターベーションをしてるわけではありません。」とろ過装置業界で働く29歳のロン(Ron)は打ち明ける。「どうしてもやめられない癖なんです。」

コルトは次のようにアドバイスする。「心理療法では、このようななかなかやめられない癖に悩みを抱えるクライアントには、その行為を自覚する方法を教えるようにしています。これが、このような習慣を断ち切るための最初のステップです。」

彼はこの現象が有害な男らしさに関与しているかもしれないと指摘する。「結局は男性器に関することです。自分の男らしさに不安を抱えていたり、十分に男らしいと認められるため〈こう振る舞うべき〉という非現実的な理想にプレッシャーを感じているひとは、ひどい不安感に襲われることがあります。」

アイルランドのキャバンに住む30代の公務員、マーティン(Martin)は、陰嚢のスレスレの場所に手を置く、より実用的な理由を教えてくれた。「トラックスーツのパンツの紐にドラッグの包みをくくりつけて、睾丸の周りにぶら下げておくんです。身体検査をされても睾丸には触られないので。」

その一方で、マーティンは麻薬を隠し持っていないときも定期的にこの行為をしていると認めた。「ドラッグを売らなくても、ステータスシンボルとして触るひともいます。俺は男だ、とね。公共の場でも家でも、気分を落ち着かせるために。」

では、麻薬の密輸を除外するとしたら、公共の場で性器を掻いたり、触ったり、もしくはもてあそんだりしたいという衝動は、一体どの段階で許容範囲を超えるのだろうか。

「まず、あなたが公共の場でボトムス(ズボン)に手を入れていることに気づいた場合、もしくはそれを誰かに指摘された場合、強迫的な場合を除いて、それは普通の衝動だということをお伝えしたいと思います。」とコルトはいう。「それでも自分の陰部をいじくり回しながら公共の場を歩き回るのは、決して好ましいとは言えないでしょう。」